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オペラの制作現場から アーカイブ

2011年11月17日 22:01

『ドン・ジョヴァンニ』の稽古場にご招待しました!

こんにちわ、ZENです。
先月公募していた東京二期会オペラ劇場11月公演『ドン・ジョヴァンニ』稽古場招待ツアー企画を、11月11日(金)、予定通り決行。24日・27日出演組の通し稽古をご覧いただきました。

当日はあいにくの雨。平日の夕方だし、もしかしたらけっこう欠席されてしまうかも…と思っておりましたのも杞憂。当選されたほとんどの方にお越しいただくことができました。


まずは音楽評論家の室田尚子さんによるプレ・レクチャー。一度もオペラを鑑賞されたことのない方もいらっしゃるので、出来る限り誰にでも分かるような「入門篇」バージョンでお願いしました。

そして、稽古場に移動して通し稽古を見学。もともと体育館なので、2階、といいますかキャッツウォークでの見学です。ご不便をおかけしました。劇場なら最高の特等席ですし、稽古場の臨場感が味わっていただけたのではないかと。

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演出グルーバーの「toi toi toi」で通し稽古スタート!
字幕も衣裳もオーケストラもない稽古ですが、舞台袖のスタッフの様子や、歌手のきめ細かい演技、ここぞというときの指揮者からの指示などもご覧いただくことで、オペラがどのようにして本番に向かっていくのか、その一端をご紹介できたのではないでしょうか。

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終了後、「本番が楽しみになりました」「演出が斬新でちっとも飽きなかった!」と喜びの言葉をいただき、感無量です。ご来場ありがとうございました。



▼白熱した稽古の、白熱のご感想は、ご来場者のブログをどうぞ!
二期会「ドン・ジョヴァンニ」稽古 - 豊玉南一丁目音楽研究所

二期会“ドン・ジョヴァンニ”通し稽古を見学しました-Allegro vivace

二期会「ドン・ジョヴァンニ」稽古場見学日記その1 / その2 - MOONAGE

二期会≪ドン・ジョヴァンニ≫稽古場見学 - ほうきぼし

二期会・ドン・ジョヴァン二への期待 - okujun blog 音楽のある風景のなかで



土日の残席が少なくなってきました。良いお席はお早目に!
チケットのお申込み・公演に関するお問合せは

二期会チケットセンター 03-3796-1831


 (月~金10:00~18:00、土10:00~15:00、日・祝休業)

 ※Web予約なら24時間受付、座席指定可能、しかも手数料0円!


『ドン・ジョヴァンニ』公演詳細ページをみる - 東京二期会オペラ劇場


ZEN

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2011年11月04日 17:58

旬の女性演出家~ヨーロッパで大活躍のカロリーネ・グルーバーの魅力

東京二期会オペラ劇場11月公演『ドン・ジョヴァンニ』は、連日、緊張感の高い、充実した稽古をしています。

ライン・ドイツ・オペラとの共同制作になる本公演の演出、オーストリア出身のカロリーネ・グルーバーは、現在ヨーロッパでもっとも充実した活動をしている女性演出家と言っても過言ではないでしょう。
2005年には母国ウィーン国立歌劇場で、ホセ・クーラ主演でプッチーニの『妖精ヴィッリ』、ドレスデン国立歌劇場でハッセ作曲の『クレオフィデ』と次々に名門歌劇場での演出デビューを飾り、同年の「オーパン・ヴェルト」誌選定年間最高演出家にノミネートされました(00、03年にもノミネートされています)。

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ライン・ドイツ・オペラでは、今年1月にラモーの『プラテエ』を演出=写真=して好評を博し、11月の東京二期会オペラ劇場での新制作ワールド・プレミエに続き、来年2012年6月22日初日のデュイスブルクで『ドン・ジョヴァンニ』を演出します。

▼デュイスブルクの公演紹介はこちら
Wolfgang Amadeus Mozart- DON GIOVANNI (premiere) – Deutsche Oper Am Rhein (THEATER DUISBURG)

▼ライン・ドイツ・オペラ総裁のクリストフ・マイヤー氏のインタビューもご参考に。
「オペラを楽しむ〜《音楽劇場は国境を超える》」 - 東京二期会


来年1月には、ハンブルク州立歌劇場でライマンの『リア』を演出する事になっており、音楽総監督のシモーネ・ヤングの指揮との女性同士によるプロダクションが、ヨーロッパでは話題になっているそうです。

ハンブルクでのライマン『リア』公演情報はこちら - hamburgische-staatsoper


今回の『ドン・ジョヴァンニ』では、とにかく東京でワールド・プレミエを迎えるとあって、10月11日には日本の稽古に参加するという異例の長期滞在。盟友である装置家ロイ・スパーン氏、衣裳デザイナー、メヒトヒルト・ザイペル氏もほぼ同時期に到着し、万全の稽古体制で臨んでいます。
ザイペル氏による衣裳は、合唱のひとりひとりまですべてオートクチュール!
美しい舞台が期待されます。どうぞお楽しみに!

▼ワールド・プレミエの東京公演はこちら
二期会創立60周年記念公演 2011年11月『ドン・ジョヴァン二』 - 東京二期会オペラ劇場


ZEN

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2011年10月14日 16:39

【ネット限定企画】11月公演『ドン・ジョヴァンニ』の稽古場に20名様をご招待!!

東京二期会は、11月公演『ドン・ジョヴァンニ』の稽古場に抽選で20名様をご招待します。

この度の『ドン・ジョヴァンニ』は、ライン・ドイツ・オペラ(デュッセルドルフ/デュイスブルク)との共同制作。しかも、デュイスブルクに先駆けて東京で幕を開ける、ワールド・プレミエ公演です!
普段は決して一般に公開されない稽古場ですが、今回はプレミエ記念として、特別にいち早くその舞台の様子をご覧いただける機会をつくりました。どうぞ奮ってご応募ください!

◇開催要項◇
【日時】2011年11月11日(金)16:00集合 20:30終了予定(途中休憩含む)
【会場】都内
【稽古の内容】今回ご覧いただく予定の稽古は、11月24日・27日出演組(宮本益光、斉木健詞他)による「通し稽古」です。「通し稽古」とは、原則的に音楽と演技を止めることなく、本番通りに舞台を進行させる稽古のことです。指揮、演出、キャストは本番通りですが、舞台メイクはなく、大道具、小道具及び衣裳は本番とは異なります。また、オーケストラの代わりにピアノが演奏します。字幕はつきませんが、事前に解説があります。
また、状況によって中断し、稽古内容を変更する場合があります。予めご了承ください。
 
【応募方法】お申し込みの方はこちらの「お問合わせフォーム」に、以下の項目をご記入の上、フォーム内の[送信]ボタンをクリックしてください。

お問い合わせフォーム

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  《ツイッター・アカウント》
  《フェイスブック・アカウント》
  《メルマガ配信希望》  有 ・ 無 ・ 登録済
 
【応募締切】10月28日(金) 23:59必着
【当選発表】当選者様へ稽古場招待詳細のご連絡をもちまして、発表に代えさせていただきます。


▼『ドン・ジョヴァンニ』の公演詳細はこちら
2011年11月 二期会創立60周年記念公演『ドン・ジョヴァンニ』 - 東京二期会

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2011年04月13日 10:25

『フィガロの結婚』指揮デニス・ラッセル・デイヴィス来日

二期会創立60周年記念公演、東京二期会オペラ劇場4・5月公演、『フィガロの結婚』の指揮者デニス・ラッセル・デイヴィスがバーゼル交響楽団との4月6・7日(マーラーの交響曲9番がメイン)のコンサートを終え、バーゼルからフランクフルトを経て、そして臨時のソウルを経由し、4月9日(土)成田空港に到着しました。

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日本への渡航制限がかかっているオーストリアからの来日。欧州でも連日流されている震災の報道に、現代を代表する作曲家にしてマエストロの盟友、フィリップ・グラス氏から「君は本当にいくのか?」と心配されたそうです。

それでもマエストロは来日してくれました。
さっそく11日(月)は、1時~9時と『フィガロの結婚』の稽古に精力的に参加しています。
夜の稽古前の休憩に余震が起き、滞在するホテルのエレベータが止まりましたが、マエストロは落ち着いた様子で夜の稽古に参加しました。
その大いなる使命感に、私たちも感謝の気持ちでいっぱいです。

マエストロ・デイヴィスにとっては、今回の『フィガロの結婚』が日本での初タクトとなります。
マエストロの来日で、キャストたちも本番に向ける想いを確かなものにしたと思います。
どうぞご期待下さい!

▼公益財団法人東京二期会理事長メッセージ~東日本大震災によせて
「人の声には、心に語りかけ、魂に感動を与える力が宿っています」

▼公演詳細はこちら(予告ムービーupしました)
二期会創立60周年記念/東京二期会オペラ劇場『フィガロの結婚』- 東京二期会
2011年4月 28日(木)18:30
29日(金・祝)14:00
30日(土)14:00
5月 1日(日)14:00
東京文化会館 大ホール(JR上野駅公園口前)

ZEN

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2011年02月25日 11:30

コンヴィチュニーの演出では、すべてのことが音楽から生まれるのです
~ヨハネス・ライアカー(《サロメ》舞台美術)インタビュー

   聞き手:森岡実穂、山崎太郎  
   ドイツ語通訳:蔵原順子

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『サロメ』舞台美術
ヨハネス・ライアカー
――ライアカーさんは、ペーター・コンヴィチュニー(ウィーン《ドン・カルロス》、ミュンヘン《トリスタンとイゾルデ》)、ガイ・ヨーステン(アントワープ《スペードの女王》、ライプツィヒ《トロイアの人々》)、クリストフ・ロイ(ロンドン《トリスタンとイゾルデ》)フィリップ・ヒンメルマン(ブレゲンツ《トスカ》)など、たくさんの第一線の演出家の方々と、それぞれに非常に強烈な世界観をもった、オリジナルな舞台をつくっていらっしゃいますね。

ライアカー 私は常に、それぞれの演出家、チーム全員といっしょに、それぞれの作品にとって大切なことを舞台であらわそうとしています。ご覧いただいておわかりだと思いますが、どの作品も違うアプローチ、違う作品になっています。どの作品にも共通する私の様式、私のスタイルというものがあるわけではありません。むしろ作品ごとにまったく違う世界になっているのは、作品が何をあらわしたいのかを重要視しているからだと思っています。
それぞれの作品の内容も違うし、劇場環境も違います。自分が知っていることをやろうというのではなく、むしろ知らないことをやろうという気持ちでそれぞれの作品に臨んでいます。それには演出家との緊密な関係が不可欠だと思っています。全く新しい目でその作品を見ようということを心がけています。

――コンヴィチュニーさんと一緒にお仕事をされていることもひとつの理由だと思うのですが、あなたは劇場全体を観客に実感として把握させるような、スケールの大きい装置を作られますね?

ライアカー とくにコンヴィチュニーさんとの作品ではそういうことが多いのですが、常にバロック以来、観客と舞台の間に暗黙のうちに存在する「第四の壁」を取り払おうということ、その壁を突き破り、聴衆に自分の存在をちゃんと意識させるというということを心がけています。最初にそれをかたちにしたのはベルトルト・ブレヒトでした。見えない壁を突き破ることによって、聴衆はあたらしい体験をすることになります。劇場というところでは、おおいに、観客との直接的なインタラクションがあってしかるべきなのです。そうやって壁を突き破ることによって、たぶん、戸惑いが生まれると思います。でも戸惑いとともに、作品を見る目もかわる。新しい視点で作品を見るようになると思っています。

――今日もまた新しい形で、ひとつ壁が破られたような舞台でしたね。

ライアカー 今回の《サロメ》という作品においてとても大切なことは、そこに登場する人物を、それぞれにあらかじめ与えられた物語から解放してあげることです。運命とはもう決まっているもので、人はそれに従わざるを得ないように見えるのですけど、そうではなくて、その運命に従わなくてもいいんだ、それぞれの人生というのは自分でつかむものであり、自分で自分を解放し、自分の主人になることができるんだ、そういう可能性を示したかったのです。
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――巨大で堅牢、そして舞台一杯につくられ外部のないシェルターの存在が、最後のカタルシスにとって非常に効果的でした。

ライアカー 完全に閉ざされた社会、まるで終末劇のように、そこから逃れるすべはない世界を描こうとしました。でも、強く望めば、自分の意思があれば、外に出る道はあるかもしれないのです。それは最終場面で現実となり、愛のほうが死よりも強いのだということがあらわされます。
ハイナー・ミュラーの作品『アルゴー船員たちのいる風景』の中に、「第三次世界大戦後のシェルター」というト書きのついたシーンがあるんですね。そういうシチュエーションをイメージして、外界はもう完全に崩壊しているけれど、そのシェルターの中で、外にあった昔の構造だけはまだ生き延びているという状況を想定しています。ちょっとベケット的な状況ですね。生き延びた最後の人間であるにもかかわらず、崩壊以前と同じように生きていてなんら変わっていない、もしかしたらもう地球最後の人かもしれないのに、やっていることは同じで、何も学んでいないということをあらわそうと思いました。

――この《サロメ》の舞台をつくるにあたり、演出家ほかのチームメンバーと舞台美術家との間ではどういう共同作業のプロセスがあったのでしょう?

ライアカー 私はいろいろな演出家と仕事をしており、その準備の仕方というのはそれぞれです。いろいろな方と仕事をすることで、新しいインスピレーションが得られます。自分自身の考えがあらたまることもあり、発想も豊かになるので、それはとてもいいことだと思っています。
とりわけコンヴィチュニーさんとの仕事というのはもう準備期間からして楽しくて、準備期間が全制作過程の中で一番楽しいと言っても過言ではありません。だいたい3、4日間、全員で一緒に音楽を聴くところからはじめて、歌詞を一緒に確認しながら、それぞれ自由に意見を述べます。本当にオープンに意見交換をして、その会話の中から徐々に「これはこういう風に舞台上で実現しよう」という方向性が固まってくる感じです。音楽や歌詞が何を言っているんだろうということを確認しながら進めて行き、そのうちその中から何かが生まれるという感じですね。

――今回、シェルターという装置は作品解釈の核となると思うのですが、それはどんな流れの中で出てきたのですか?

ライアカー この準備期間の会話の中では、皆がそれぞれ思いついたことをどんどん言ってもいいというのがすごく大事なんですね。時にはすごくばかなことも言うかもしれない、でもそこからなにかが生まれるかもしれない。どこかの時点で「なにかハイナー・ミュラーを思い出すよね」という話から始まったと思います。非常に音楽に力があるので、この音楽が醸しだす圧倒的なエネルギーを受け止められるもの、これに持ちこたえられる何かが必要だ、というところから、シェルターというアイディアが固まってきました。これほどの力を受け止めるには、ばらばらなものでは無理だと思うのです。点在している波止めブロックのようなものでは壊れてしまうでしょう。だから舞台全体を完全に覆い尽くすような形で、押し寄せてくる音楽の力にも十分持ちこたえられ、逆にそれを押し返すほどの強靭な何かが必要だ、というところから始まったと記憶しています。

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――今回の照明はマンフレッド・フォスさんですが、今回、照明が素晴らしい効果を上げているところをご紹介いただけますか?

ライアカー 特に、いま私たちがいる部屋のような現実の照明を模しているところと、非常にイマジネーションにあふれた部分の対比が一番注目してほしいところです。照明によって、突然まったく別の雰囲気が生まれます。たとえば「七つのヴェールの踊り」では、単なる通常の舞台照明だけではなく、左右から強い照明を当てることによって、ダ=ヴィンチの『最後の晩餐』を思わせる、表現主義的な影をつくっています。このアイディアは、最初から意識していたわけではないのですが、結果として、まさにイエスの「この中に私を裏切るものがいる」という言葉を聞いたときの弟子たちの驚愕が、皆の手の動きであらわされて、すごくいい絵になったと思います。
影の効果をうまく使っているところは、必ず音楽と連動しているところでもあるんですね。実は最初の案としては、明かりも徹底してずっと同じにしようかという話もあったんです。けれどそれではつまらないし、内容的にみても、音楽だってずっと同じトーンで進んでいるわけではないので、それはやはり音楽にあわせて変化をつけなければならないと思ったわけです。特に「七つのヴェールの踊り」というのは、突然それまでとまったく違う音楽になりますよね。それならやはり、視覚的にもそう見せなくてはならない。それで照明を変えようということになったわけです。

――動きにしても照明にしても、常にとても演出が音楽的です。

ライアカー まさにそれがコンヴィチュニーの強みで、彼のすごさというのは、まるで指揮者が曲を指揮するように、オペラを演出しているところだと思います。すべてが音楽から生まれているんです。


(2011年2月18日、 東京文化会館)
構成:森岡実穂

*ライアカーさんの舞台美術家としてのキャリアやお仕事内容など、このインタビューの続きを、2012年発売(予定)の「クラシックジャーナル 特集:ペーター・コンヴィチュニー(仮題)」(アルファベータ)でぜひご覧ください。

▼公演詳細はこちら。
2011年2月公演 R.シュトラウス『サロメ』 - 東京二期会オペラ劇場


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2010年02月03日 10:00

『オテロ』観劇後は、同名のワインで乾杯!

オペラの観劇後はどうお過ごしでしょうか。
最近は自宅でゆっくり食事をされる方が増えていますね。

公演初日までカウントダウンが始まった『オテロ』。
観劇後には、同じ名前のワインで余韻に浸るのはいかがでしょうか?

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「オテロ」とは、フランス語のシャレ(otez[オテ]=give up, L'eau[ロウ]=water)で、
*「もう水なんていらない!」→「だからワインを飲みましょう!!」*という意味が込められているとか。


▼ワインの詳細はこちら
OTHELLO(オテロ) - ワイン通販 エノテカ・オンライン

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2010年01月29日 10:58

『オテロ』稽古場リポート

連日熱のこもった稽古が行われている『オテロ』。
今日は2人のオテロに注目してみました。

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気迫溢れるオテロを演じたあとの福井敬。
演出・白井晃はさらに密度の高い表現を要求。

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休憩時間も話し合いが続く、白井とオテロ役・成田勝美。


▼『オテロ』公演詳細はこちらから
2010年2月公演G.ヴェルディ『オテロ』 - 東京二期会オペラ劇場


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2010年01月27日 12:54

マエストロ来日!

東京二期会オペラ劇場『オテロ』の指揮、ロベルト・リッツィ・ブリニョーリがいよいよ来日します。
二期会には'06年『蝶々夫人』『ラ・ボエーム』に続き3度目の登場。

巨匠ムーティの薫陶を受け、イタリアオペラの伝統を格式を備えたマエストロ。
来シーズンにはメトロポリタンオペラデビューも予定されています。

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手前はブリニョーリがタクトをとったミラノスカラ座・01/02シーズン「オテロ」のちらし。
イアーゴ役にレナート・ブルゾンでした。

▼『オテロ』公演詳細はこちらから
2010年2月公演G.ヴェルディ『オテロ』 - 東京二期会オペラ劇場


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2010年01月26日 10:30

お見逃しなく!お笑い芸人ナイツが『オテロ』の稽古場に潜入!
TOKYO MX テレビ「Tokyo Boy」にて放映

東京都の「今」を伝える情報番組「Tokyo Boy」の、今回のテーマは「廃校」。
かつて学校の体育館だった場所から、怪しい歌声が・・・!?
お笑い芸人のナイツが『オテロ』の稽古場に潜入、演出・白井晃や歌手たちに突撃インタビューを行います。ぜひお見逃しなく。

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収録の様子から:
ナイツ(右側2人)のインタビューを受ける、演出・白井晃(写真中央)

「Tokyo Boy」 TokyoMXテレビ(東京地区:デジタル9ch,アナログ14ch)
放送予定:1月31日(日)夜9:00~9:30(再放送:2月6日(土)夜11:30~12:00)

▼番組情報はこちら
TOKYO BOY - TOKYO MX オンライン
※放送局の都合により番組が変更になる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

▼『オテロ』公演詳細はこちらから
2010年2月公演G.ヴェルディ『オテロ』 - 東京二期会オペラ劇場


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2010年01月12日 18:50

「オテロ」稽古場リポート!

三が日も開けて間もない今月初旬より都内某所に稽古場を移し、本格的な稽古が始まりました。

本番さながらの舞台装置を組み入れています。

何も無いフロアに・・・

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次々と舞台が組まれていきます!

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だんだんと形になって現れてきました。

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公演まで、残すところ1ヶ月とあとわずか。
本舞台に近い状態で試行錯誤を繰り返し、連日熱のこもった稽古が行われています。
ご期待下さい!

▼『オテロ』公演情報・チケットのお求めはこちらから
2010年2月公演G.ヴェルディ『オテロ』 - 東京二期会オペラ劇場

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2009年08月10日 12:05

オペラ国内共同制作(2) オペラの制作現場からーその25

 文化庁の先導モデル国内共同制作によるオペラ『カルメン』が、日本のオペラ史に新たな歴史を作りました。今回は兵庫県立芸術文化センターの佐渡芸術監督がプロデュースし、共同制作4団体が協力して制作を行い、出演者・スタッフもインターナショナルな規模で選ぶという、画期的なプロジェクトでした。兵庫と二期会で合同の合唱団を結成すると共に、少年少女合唱団は参加3団体が地元の合唱団を起用しました。そして全15回公演の大半で満席、残りも90%をはるかに超えるお客様で会場が埋まり、しめて入場者3万1千人という驚異的な結果をもたらしました。

 フランスでも活躍する佐渡裕の選んだ演出家は、パリオペラ座の総裁も務めた名演出家ジャン=ルイ・マルティノーティ。彼の卓越した演出力と出演者達一人一人への根気強いしかも厳しい指導によって、参加者全員参加によるドラマ作りとなって、自信溢れる舞台を作り上げたのです。

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        写真は林美智子の演じたカルメン ©小林孝良

 公演に漕ぎ着けるまでには、それぞれの参加団体が個別の要求を控えて一つの目標を設定するまでの膨大な議論と試行錯誤がありました。採用する楽譜も結果的にはセリフが入るオペラコミック版に部分的にギローの手が入ったレチタティーボ版(グランドオペラ版)を混ぜた上演となったのもその一つです。しかし、それらの全ての苦労は結果によって報われるということが証明されたわけです。一人一人の歌手達のレベルアップも著しいものがありましたが、我が国最高の舞台を目指すという目標がありますから、国籍や所属に拘らずオーディションを行い、佐渡芸術監督主導で歌手を選考し、結果的に今望み得る最高レベルの公演となったと思います。

 結局は、自分たちがやりたいオペラをやるというのではなく、どうすればもっとお客様に感動していただけるオペラが作れるのかを追求した取り組みに、はっきりと成果がついて来たということだと思います。

 オペラ公演をやりたいとお考えの団体にとって、経済的リスクを軽減する目的で共同制作を行おうとすれば、多かれ少なかれこのような準備作業が必要となります。それを大変と見て逡巡するか、その準備があったればこそ単独では為し得ない感動的な公演ができると考えるかによって、結果はまるで違ってくると確信しています。(常務理事 中山欽吾)

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2009年06月25日 00:30

「オペラ国内共同制作(1)」  オペラの制作現場からーその24

 平成19年度に記念すべき文化庁国内共同制作がスタートしました。正式には「文化庁芸術創造活動重点支援事業・舞台芸術共同制作公演」と命名されたこのプログラムは、初年度はパイロット事業ということで、神奈川県民ホールを擁する財団法人神奈川芸術文化財団と(財)日本オペラ振興会、日本オペラ連盟、東京フィルハーモニー交響楽団、東京文化会館など、芸術団体とホールを持ちオペラの自主公演を行って来た団体が、持てるノウハウを出し合って、『リゴレット』を制作上演しました。

 翌20年度には、滋賀県の財団法人びわ湖ホール、神奈川県民ホールと当財団の三者が基幹制作団体の日本オペラ連盟とチームを組んで取り組んだ『トゥーランドット』を制作上演しました。びわ湖ホールは9年間にわたってヴェルディオペラの本邦初演を続けた輝かしい記録を持ち、一方神奈川県民ホールは、数年にごとに邦人作曲家に委嘱して新作オペラを制作上演してきた、共に輝かしい歴史を持っています。

 単独では為し得ない舞台芸術の実現という目標に向かって、三者三様に蓄積してきたノウハウをまとめあげた成果は、百聞は一見にしかずの言葉通り、圧倒的な存在感の公演を実現することができました。演出を若手演出家のホープの一人、粟国淳に委せたことにより、イタリアの香りを残しながらも封建時代の中国を機械に支配される現代風奴隷社会に見立てたような、大型の舞台装置が迫力満点の舞台を現出しました。

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 このプログラムの重要な点は、制作側から見ると最終段階の立ち稽古を実際公演する劇場で練り上げることによる完成度の向上、それぞれの劇場単独では各2回の上演となるところ、4回公演を可能にしたことによる出演者達の練度のアップ、などが挙げられますが、観客側から見ると、助成額の上乗せによって、視覚上も単独では絶対に実現不可能な上演規模を実現できたことが挙げられるでしょう。

 今年度は二期会も参加した佐渡裕プロデュースオペラ『カルメン』が、この共同制作スキームで上演されますが、兵庫県芸術文化センターでの9回公演、愛知県芸術劇場での2回公演、二期会での4回公演を合わせて、何と15回のロングランが実現します。特定の指揮者の名前が前面に来ることになったのは、兵庫県芸術文化センターの芸術監督である佐渡氏をこの共同制作の芸術監督として、求心力のある制作を実現しようという参加団体の意志があるからに他なりません。

 このように芸術的に一貫した制作をするためには、それぞれ芸術監督をおく複数の団体での共同制作では、事前のコンセンサスが事業成功の重要な鍵になることを意味しています。(常務理事 中山欽吾)


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2009年06月03日 23:44

「国際共同制作(4)」    オペラの制作現場からーその23

 国際共同制作によって我々が得たものは、決して少なくはありません。しかし、先方にとっても共同制作は重要な選択肢になっているのです。今、欧州の歌劇場は厳しい予算難に見舞われていて、劇場運営のあり方が問われています。厳しい予算の中でいい作品を出そうとすると、観客の重ならない複数の歌劇場が共同制作をする方法が一番優れており、すでに欧州の歌劇場はこのような共同制作は恒常的に行われています。2個所だけではなく数カ所が組んでやっているケースも稀ではありません。

下はハンブルグ州立歌劇場との共同制作『皇帝ティトの慈悲』記者発表。前列右から演出のコンヴィチュニー、指揮のスダーン、後列右から公演監督多田羅迪夫、主役の望月哲也、林正子、林美智子、幸田浩子の各氏
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 計画が進んだ段階で、新たな劇場が参加を希望するケースも増えています。財政的に楽になるので、欧州の各劇場はお互いのネットワークをフルに使って情報交換をしているわけです。それに伴い契約内容もバラエティに富んだものになりつつあり、各団体の負担事項や参加団体での経費分担など、色々なケースの処理ができるようになりました。

 昭和音楽大学が前後7年間にわたって世界のオペラ事情に関わる研究を行い、筆者も研究員を務めましたが、その中で実際の共同制作契約の一例を紹介しています。例えば、かつら、履き物など、数百点におよぶ小物は、中には各劇場で汎用的に使っているものもあって、数ヶ月間日本に運ぶというわけにはいかない場合、我々が独自に調達するとか、演出による特有のものは、セットや衣裳とともに送ってもらうなど、きめの細かい作業が発生します。

 ドイツ人と日本人の体格の差も問題になることがあります。日本でもダブルキャストで同様の問題が起こりますが、1日で仮縫いをしてサイズを変えるようなことは当たり前の仕事です。しかし体格差がはるかに違えば、日本人専用の衣裳をあつらえる必要も出てきます。衣裳はまた使用後のクリーニングに至るまで細かい契約を作る必要があるのです。

 双方のオペラ制作のプロセスが全く違うことから生まれる様々な問題もあります。我々に不足している点や考え方を取得することもできましたが、一方で相手の歌劇場にとっても日本流のやり方は極めて新鮮に映ったようです。劇場に附属する装置・衣裳の工場を持つ欧州の劇場にとって、特に自前の工房も持たず、外注先とチームを組んでプロジェクトベースで行う日本の制作手法には目を見張りました。そのプロジェクトを現場で統括する舞台監督の活躍をみて、「神業だ!」とその手を握ったことが思い出されます。

 以上の他にも、欧州の州立レベルの歌劇場との共同制作は、日本にいて欧州と他流試合ができるという、願ってもない機会を与えてくれます。東京二期会では、今もコンスタントに海外の歌劇場との協力関係を続けながら、他のグループ、例えば自主公演をしているホールともグループを作って新たな共同制作の枠組みに取り組み始めています。次回以降にはその国内共同制作についてもとっておきのお話しをしたいと思っています。(常務理事 中山欽吾)


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2009年05月28日 10:23

「国際共同制作(3)」    オペラの制作現場からーその22

 国際共同制作はいいことばかりかというと、必ずしもそうとは言えないことも分かってきました。先方は新演出の初日を出したシーズンには少なくとも5、6回の再演を行うのですが、装置・衣裳を日本と共用しますので、船便で運び通関を通す期間を考えると、同一シーズンに両国で公演することは困難さが伴います。

 また舞台装置の工業規格が異なるので、公演回数の多い欧州の劇場内工房で製作するのが最も問題が少ないのです。 しかし、そうすると常に欧州側が初演をして、オフシーズンに日本に輸送して次のシーズンに日本公演という順番になります。向こうで出来上がったものを借りて来たと誤解を受けないためには、計画段階から準備に至るまでの双方の会議内容など議事録をとっておくとか、先方のプレミエのプログラムに「東京二期会との共同制作」と記載して貰う必要もあります。

 ハノーファー州立歌劇場との共同制作『さまよえるオランダ人』では、ベルリン在住の日本人演出家(渡辺和子氏)を起用し、日本でプレミエを出すことにしたり、二期会の出演者が先方の公演に出演したり、新たな試みも行いました。日本公演のために来日した先方の歌劇場総裁から「合唱のドイツ語がはっきり聞き取れるのには驚いた」などと高い評価を受けたことも記憶に残る思い出です。(下の写真は稽古場に組まれた舞台と演出家渡辺和子氏、下段に渡辺氏筆によるゼンタ、オランダ人の衣裳イメージ)

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 ただ、制作が実際に行われる年と、日本公演のシーズンが異なってしまうために起きる問題があります。日本公演の前年度に先方側の公演が行われるとき、まだ日本での文化庁助成認可が下りているわけではなく、リスクを全部我々が負った形で分担金を払い込む必要があります。その工面が大変なのです。それを無事クリアできたとして、実際の予算が認可されたときの為替レベルに差ができると、当然差損が発生するリスクが発生します。100%実現するか分からない状態では為替リスクのヘッジも難しく、不安の塊となっていきます。
 
 先に出ていったお金を支払えるだけの助成が出るかどうかは、上演シーズンの認可事項で決まります。年度のまたがるプロジェクトを認可する仕組みがないために起こる問題なのですが、十分な資金を持たない我々のような芸術団体にとって厳しい現実でした。このところしばらく中断しているのは、資金事情という背に腹替えられない問題があることも事実です。しかし、パートナーによっては、単独では制作できなかったものが実現するというプラス面に着目し、二期会側のリスクを配慮して、分担金の大部分を日本での公演年度に払い込むことを了承するケースも出てきました。これは確かな前進で、再び新たな共同制作を実現することも視野に入ってきました。

 今では、ドイツだけではなく欧州の他の国からも、複数の劇場から共同制作のオファーがあります。リスクを慎重に計りながら、再開できるよう検討を続けているところです。(常務理事 中山欽吾)


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2009年05月15日 20:53

「国際共同制作(2)」    オペラの制作現場からーその21

 前回に引き続いて、東京二期会が進めてきた国際共同制作の軌跡をたどります。『ニュルンベルクのマイスタージンガー』公演の成功をスタートに、翌2003年、ドイツのケルン市立歌劇場と共同で白紙から作り上げた『ばらの騎士』は、来日した現地スタッフによって、ケルン以上の出来と激賞されました。当時同劇場総裁だったギュンター・クレーマーの演出には賛否が分かれましたが、5年以上たった今でも色あせない、映像が心に刻み込まれて残っています。(下の写真は二期会公演からフィナーレのテルツェット:右より佐々木典子、林美智子、幸田浩子)

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 このケースでは、当方からR.シュトラウスの名曲『ばらの騎士』の共同制作を打診するところから始まりました。二期会オペラの観客から頂いたアンケートで常にリクエストの大きな演目であること、また東京二期会の先輩方がワーグナーの紹介を果たしてきた最初の50年の総括は『マイスタージンガー』としても、次の世代ではR.シュトラウスに取り組むという方針がありましたので、50周年記念公演の目玉の1つにしたいと、思いを伝えました。クレーマー氏は、最初「なんでそんな博物館にはいるような演目をするのか?」と冗談を言っていたのですが、「待てよ、ハプスブルグ当時の上流階級の最高の趣味はジャポニスムだったなあ」とつぶやき、来日して桂離宮を見学するに及んで、この共同制作の方向は定まりました。

 この公演の成功は、ドイツの他の歌劇場にもニュースとして流れ、2004年のコーミシェ・オーパ・ベルリンとの『イェヌーファ』、2005年のハノーファー州立歌劇場との『さまよえるオランダ人』、翌2006年のハンブルク州立歌劇場との『皇帝ティトの慈悲』と続く国際共同制作の嚆矢となりました。そのいずれもが二期会オペラにとっての記念碑的上演となり、公演の質的レベルを更に押し上げる起爆剤となったのです。

 しかし、一方で問題も浮き彫りになりました。先方とペースを合わせるためには、少なくとも3年前から準備を重ねる必要があります。作られたものを借りてくる公演と、共同制作が違う一番のポイントは、当方の計画が交渉先の新制作プランに合致していないとまとまらないことです。従って、先方のペースに合わせて枠組みがスタートするため、財政基盤の劣る我々のような団体には文化庁の助成が決まる前の先行投資という厳しい資金リスクに直面することになるからです。

 今までの交渉経験では、なかなか話しが合わずに試行錯誤することもありましたし、まとまりそうにない場合は、諦めて他の劇場を当たることもありました。しかし、二期会の日本での上演レベルが、来日スタッフから伝えられるようになって、最近ではむしろ先方からも誘いが来るようになってきました。これは、欧州のオペラ劇場が財政難となっていて、頻繁に共同制作が行われている現状と、二期会の実力が共同制作のパートナーとして認められたという両面の理由からでしょう。今では複数の劇場と接触を保ちながら双方の希望をマッチングさせるという、新たな段階に移行しています。

 このように、国際共同制作で成果を挙げることができたのも、それ以前のオペラ制作のやり方から思い切って海外との協業へと歩を進めたことが成功の鍵でした。この文化庁の目指したプログラムは、うまく活用すれば極めて大きな成果を挙げ得る画期的なものだったことが証明されたわけです。(常務理事 中山欽吾)

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2009年05月08日 11:25

「国際共同制作(1)」    オペラの制作現場からーその20

 しばらく〈オペラの制作現場から〉をお休みしていましたが、少し方向を変えたテーマで再開することにしました。よろしくお願いします。
 我が国のオペラは全国で年間千回以上も上演されているにもかかわらず、シーズン制をとって継続的に公演を続けているのは東京の新国立劇場だけという状況です。各都市の中央にオペラ劇場があるオペラ発祥の地欧州のそれとはかなり様相を異にしています。その日本流のやり方を現実としてとらえて、よりよい姿に磨き上げるという発想を持ったのは、オペラとは全く関係のない世界から入ってきて、民間のオペラ制作団体の窮状を実感したからに他なりません。永年の慣習の中で確立していた専門家集団との協業といういわばプロジェクト的な方式は確立していました。しかし財政的なリスクの軽減、オペラの完成度の向上など、団体として目指す方向性ははっきりしているのに、その手段についてはそこ止まりだったのです。これから何度かにわたってお話しするのはそんな状況からのブレークスルーを目指した活動に関する悪戦苦闘の軌跡です。以後何度かにわたって、その軌跡をたどってみましょう。

 二期会では50周年記念公演シリーズを制作した頃から、海外のオペラ劇場と共同制作を進めてきました。その大きな動機は、文化庁が日本のオペラをより大きな視野でレベルアップする方策を模索する中で実現した助成システムがスターとすることが発表されたからでした。2002年の『ニュルンベルクのマイスタージンガー』は二期会50周年の目玉演目でしたが、単独で取り組むには余りにも規模が大きくリスクがありました。そこで、この文化庁の枠組みによる海外との共同制作に着目し、欧州の数劇場と接触を試みました。最終的には、過度にドイツ的ではなく衣裳・装置もユニバーサルな演出のベルギー王立歌劇場(モネ劇場)に決まり、モネ劇場スタッフまで巻き込んだ、同劇場にとっても大規模な再現上演となりました。当時モネ劇場の総裁はオルガニストとしても著名な芸術家であるフォックロール氏で、少し前に文化庁の招聘で来日されたおりに二期会にも来訪されて、お互いに将来の協力について前向きな会話を持っていたことも、この共同制作決定に至る重要なステップとなっており、全面的なモネ劇場の協力を取り付けることができたのです。

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  二期会創立50周年記念公演『ニュルンベルクのマイスタージンガー』フィナーレ(2002年)

 休憩時間を入れて6時間に及ぶ巨大なこのオペラを日本人のみの出演で実現したことによって得られた果実は計り知れないものがあり、共同制作の意義がはっきりと認識できたのです。東京文化会館の本公演の前に、横須賀芸術劇場のご好意で、同劇場の舞台を使って十分の完成度になるまで準備できたこと、特に総勢150名におよぶ出演者達の乱闘騒ぎのシーンでは、モネ劇場の演出部から派遣されたスタッフによる周到な稽古によってダイナミックな動きが実現し、大舞台の成功に結びつけることができたのでした。(常務理事 中山欽吾)


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2008年11月10日 14:43

歌手の声質 ー オペラの制作現場からNo.19

  しばらく「オペラの制作現場から」のテーマでのブログ投稿を怠っていました。また、少しづつ書き続けていきたいと思います。最初にもお書きしたように、このシリーズの主旨はオペラの舞台の表・裏で進むいろいろなトピックスを、折に触れてご紹介するというものですが、さぼっている間にもオペラ制作はずっと進行しており、今は、日生劇場開場45周年記念公演『マクロスロス家の事』の立ち稽古が佳境を迎えています。

 今日の話題は「歌手の声質」、すなわちソプラノ、メゾソプラノ、アルト、テノール、バリトン、バスという大きな意味での声質に加え更に踏み込んだ分類について触れたいと思います。オペラの演目で要求される声は、その役柄に応じた声質が要求され、強さによる区分け、歌唱テクニックによる分類などが加わります。レッジェーロ、リリコレッジェーロ、リリコ、リリコスピント、スピント、ドラマティコなどという一連の区分けや、声の強さばかりでなく、スーブレット、コロラトゥーラなど声の性格で区別することもあります。

 スーブレットはフランス語で「お手伝い」や「利口で抜け目のない小娘」といった意味を持つように、充実した明るい中音域を持つレッジェーロやリリコレッジェーロの声で、生き生きと歌うことが要求されます。一方、コロラトゥーラは早い修飾を持ったパッセージを高度な技術で歌いこなすことが要求されます。一般に超高音での装飾唱法が多いのですが、アジリタといわれる唱法では超高音に限らず、ロッシーニのオペラに多い短い音符で書かれたパッセージを正確に歌うことも広い意味でのコロラトゥーラの技法です。

 スーブレットとは古いフランス語で「小間使い」や「はすっぱできびきびして、ずるい企みなどをする小娘」を表していることばで、『ドン・ジョヴァンニ』のツェルリーナ、『コジ・ファン・トゥッテ』のデスピーナなどがそれに当たります。コロラトゥーラとは装飾音のついた高音の早いパッセージなどを歌いこなすことが要求され、『魔笛』の夜の女王、『ナクソス島のアリアドネ』のツェルビネッタなどが典型的な役柄です。

 テノールやバリトンにも同じような分類がありますが、ヘルデンとよばれる極めて強い声が要求されるオペラがあり、ワーグナー、ヴェルディ、R.シュトラウスなどのオペラにその役が出てきます。ヘルデンとは英雄的という意味で、『トリスタンとイゾルデ』や『オテッロ』などで要求される声質です。

 日本人歌手はその特性としてレッジェーロやリリコレッジェーロ、つまり明るく軽い声が多かったと長い間言われてきました。しかし最近は、強い声を得意とする人も多くなり、リリコや、さらにはヴェルディやワーグナーのオペラで要求されるスピントでも、かなり充実した陣容が揃うようになりました。これは戦後の栄養状態,特に蛋白質の摂取状態の好転によって体格のいい子供たちが多くなったように、声帯も強い声を出す力が備わってきたとともいわれますが、それだけではなく、多くの歌手たちが比較的簡単にヨーロッパに留学するようになり、そこでしっかりしたメソッドでテクニックを身につけることができるのようになったのも、大きな変化ではないでしょうか。

 一人一人の声を聴きながら、以上のような声の特徴を知った上で役柄を考えるのはプロデューサーや芸術監督の重要な役目です。しかし選ぶ人の主観によって各出演者間の声のバランスやアンサンブルを考えていくわけで、なぜこの役をこの声で?と考えてみるのも、オペラ鑑賞の楽しみの一つだと思います。(常務理事 中山欽吾)


 
 

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2008年11月04日 17:10

『トゥーランドット』記者発表開催さる

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 びわ湖ホール、神奈川県民ホールと当財団との共催オペラ『トゥーランドット』がいよいよ来春に迫り、この10月28日と29日、それぞれの開催地で記者発表が行われました。

 今年2月および3月に公演が行われた、三者による共同制作第1回目の『ばらの騎士』は、演出家ホモキ氏の見事なドラマ作りが、音楽監督の沼尻氏による大阪センチュリー響(びわ湖)と神奈川フィル(同県民ホール)の名演と相まって、観客に深い感動を与えました。

 そして来年度の『トゥーランドット』は、文化庁による芸術創造活動重点支援事業(舞台芸術共同制作公演)に指定され、日本オペラ連盟も参加した一歩踏み込んだ取り組みとなります。

 さて、神奈川県民ホール側の発表会は銀座並木通りの三笠会館、びわ湖ホール側は大津の同ホール講義室において、出席を頂いた関係各記者に説明が行われました。出席者は本プロジェクトの指揮者を務めるびわ湖ホールの沼尻芸術監督、同ホールの井上館長、一柳神奈川県民ホール芸術総監督、演出の粟国淳氏、共催の日本オペラ連盟から草壁常務理事、そして二期会側からは栗林理事長が海外出張中のため小職がその役を務めさせていただきました。

 出演者では、東京でカラフ役の福井敬、トゥーランドット姫役の横山惠子、びわ湖ではトゥーランドット姫役の並河寿美が出席して華を添えました。

 本公演の指揮をとる沼尻氏は、「びわ湖ホールにおける公演は、これまで20世紀のドイツ系オペラの傑作を中心に上演してきたが、今回はイタリア系の20世紀オペラを取り上げることになった。このオペラは『サロメ』より今に近い時代に作曲されていて、ステージとピットが一体となってドラマが進行する面白さがあります。」と述べる一方、演出家の粟国氏によれば、『プッチーニがこのオペラを作った1926年には、フリッツ・ラング監督が『メトロポリス』という映画を作っているなど、時代にエンターテインメントとしての新しいテンポ感が出てきたことを作曲家自身も意識していたと思われ、オペラ作りも今までとは違うという思いがあったのではないか。だから、リューの死以後の作曲ができなかったのは、作曲家の死までの時間を考えると今までとは違う凄いグランドオペラを考えて筆が止まったのではないかとの解釈もあり得る。」と述べ、作品への期待はいやが上にも高まってきていることを強調しました。(財団常務理事 中山欽吾)


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2008年08月22日 14:46

コンヴィチュニー登場で『エフゲニー・オネーギン』の稽古ますます佳境に入る

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            コンヴィチュニー氏(右)とアニシモフ氏(左) ©広瀬克昭

 去る8月1日から始まっている立ち稽古は、当初ライプツィッヒ歌劇場第一演出助手のヴェレーナ・グラウプナー女史によってスタートしましたが、コンヴィチュニー氏が指揮者のアニシモフ氏とともに登場したことでますます活気を呈しています。顔見せ当初、出演者全員に演出意図を詳しく説明したあと、一通り全体を通すように指示。終わって最初のひと言が「来なくても良かったようだ」。しかしそれがジョークであることはすぐに分かりました。「指示されたとおりに動くのは操り人形と同じ。自分の意志で動くことが大切だ」とコメントして、早速各場毎にきめ細かいダメ出しをして行きました。

 一動作ずつ区切って、最初は皆に任せてやらせてみて、いいところは大きな声と動作で素晴らしいと誉め、演出家の意図と少しでもずれていれば、その場の人間関係とそれぞれの人物の感情や相互の関係を歌手と確認しながら、何度も確認しながら修正していくのです。驚いたことに、そうする内に皆の動きは魔法をかけたようにみるみる生き生きとしてくるのでした。
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 稽古が終わり、マエストロ・アニシモフから、「色々な国でロシア語のオペラを振ってきたけれど、このチームが一番ロシア語になっている」とコメントがあり、声楽家出身の山下健二氏による言語指導が如何に優れたものかを全員が納得することとなりました。

 オリジナルの演出は、日本人出演者の持ち味を生かしながら新たな進化を続けており、本番まで3週間残した現時点での充実した稽古を見ていると、本番ではどんなすごいものが出てくるのかと、期待が膨らむ毎日です。(常務理事 中山欽吾)

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2008年08月01日 12:52

「演出とドラマトゥルグ」  オペラの制作現場からーその18

 最近のヨーロッパでは、新演出でいわゆるト書き通りのオーソドックスな舞台が作られることはまずありません。それどころか、時代設定も話の筋を変えてしまうことすら日常茶飯事です。たまに古い制作の舞台が残っていて再演されることもありますが、それを見てホッとされる方もいる一方で、なんて古いんだ!とがっかりされる方も多いようです。

 同様に、新演出を見て、「何がなにやらさっぱり分からない」と首をひねったり、「でたらめだ!」と怒るお客様がいる半面、演出家の新しい試みに心を振るわせて感動される方も確かに存在するのです。ヨーロッパでは、各地に劇場があって、何百年もかけてオペラを上演してきた歴史がありますので、このような変化に対する許容度は日本よりははるかに高いということもいわれていますが、この新しい傾向は最も保守的という折り紙付きのMETでもすでに顕著となっています。

 劇場にはドラマトゥルグというポストがあり、オペラに熟知した専門家がその任に就いていて、脚本家、作曲家がそのオペラをどのような背景で作り上げたか、その時代背景など、緻密な考証を行っています。一般的にいえば、ある演目を新制作しようと計画すると、まず劇場のトップ(インテンダント)がオペラ部門の部長、ドラマトゥルグ、音楽総監督と討議しながら、どのような方向性で作るかを決め、その方向に沿って演出家を起用していくことが多いようです。

 演出家の傾向は、過去の実績からおおよそは判断できますから、その時点でほぼ制作の方向性は決まったと言っても過言ではありません。ただし、あとは任せっきりというわけではなく、オリジナルを熟知した上で、それを読み替えていくという制作プロセスで、ドラマを再構築する膨大な知的作業が行われます。これがオペラという400年の歴史を持つ総合芸術を現代社会に活着させるエネルギーとなっていることは見逃せない事実です。

 最近、新国立劇場で上演された『軍人たち』を演出したのは、4年前に二期会がベルリン・コーミッシェ・オーパと共同制作した『イェヌーファ』の演出もしたウィリー・デッカーですが、まるで表現方法は違っても、底を流れる「舞台上のダイナミズム」ともいうべき、登場人物間に繰り広げられるドラマの表現方法に共通点を見いだして、鳥肌が立つほど興奮しました。

 このような実験的な表現を、それを知らない観客の皆様にお金を払わせてでもやるのはおかしいという意見もお聞きする一方で、博物館に入れるようなものは期待しないというお客様もいらっしゃって、我々はチャレンジとオリジナリティの間をいつも行ったり来たりの試行錯誤を繰り返しています。それによって生まれてくる何かを期待して。(常務理事 中山欽吾)


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2008年07月22日 14:56

「香盤と稽古スケジュール」  オペラの制作現場からーその17

 どの世界でもその道のプロにしか分からない言葉が沢山あります。舞台芸術における「香盤」もその一つでしょう。碁盤目の表で、縦軸には出演者の名前、横軸には舞台の場が書いてあり、それぞれの出番の桝目に丸印が付いているものです。座禅をする際に時間を計る線香を立てた盤に似ていることから生まれた言葉といわれています。今回はこの「香盤」とオペラの稽古についてのお話しです。

 オペラの立ち稽古では、指揮と音楽に合わせて歌うきっかけ、動くきっかけを覚え、相手役との絡みを身体で覚えていくので、出演者が揃わないとさまになりません。ところが我々のような民間のオペラ団体では、教職などに就いている歌手も多いので、あらかじめ出して貰った稽古出欠表と香盤を見比べながら稽古日程を決めて行かざるを得ません。稽古期間を通じて、全体を穴がないように仕上げるために、あらかじめいつ誰々がどの場の稽古をするか決めるのはパズルにも似た結構緻密な作業を要求されます。

 しかも長丁場の立ち稽古では、演出家の注文で一カ所を繰り返し稽古したり、動きそのものを変更することも少なくありません。勿論指揮者の要求による追加の音楽稽古もあるので、稽古日程の修正は頻繁に行われます。毎日午後9時に稽古が終わったあと、舞台監督、演出助手、副指揮、制作担当者が集まって変更点に沿って稽古表を修正し、その内容は直ちにファックスやメールで出演者達に連絡されます。

 理想的とはいえない条件下でも、必要十分な稽古を積むためには、手抜きをせずにこのような試行錯誤をきっちり積み重ねることが要求されるのです。こうして本番2週間前になると、全体を見ながら作り込んでいく通し稽古に入ります。ここからは出演者全員が完全拘束体制で完成度を上げていき、歌付きオーケストラ稽古で音楽面での確認が終わると、いよいよ会場の舞台で総仕上げにかかります。

 まず、音楽抜きで稽古場での動きを実際の舞台上で再現して、立ち位置や動きを把握する「場当たり」を済ませて、舞台でのピアノ付き通し稽古に移行します。ここでは舞台監督が舞台進行の最高責任者です。舞台の袖に陣取り、香盤とスコアを睨みながら、トランシーバーによって舞台への出入り口に配置された舞台監督助手に指令を出し、待機した出演者にキューが出されていくのです。「香盤」は舞台に穴を空けないためにもなくてはならないものなのです。(常務理事 中山欽吾)

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2008年07月09日 15:39

「二期会の流儀」  オペラの制作現場からーその16

 オペラの制作なんてどの団体でも似たり寄ったりだろうと思われる方も多いでしょうが、様々なプロダクションで出演経験のある歌手に聞いてみると、それぞれ個性があるようです。

 最近公演した『ナクソス島のアリアドネ』のプロローグでは、勿論劇中のことで大げさに描かれてはいるのですが、高慢で自己主張の強いプリマドンナや、テノール歌手が現れ、音楽教師や作曲家と丁々発止のやりとりが行われ、笑ってしまいます。多くのイタリアオペラでは、少数のスター歌手のアリアで全てが決まってしまうようなところがあるため、主役が特別待遇ということもあるでしょう。

 ご承知のように二期会の自主公演は出演資格を原則として二期会会員(準会員を含む)に限定しています。ですから、オーディションでの熾烈な競争があったにせよ、選ばれた歌手達は稽古場では皆対等です。最近の公演では、ドラマを重視する演出家が厳しい注文を出すのが当たり前になっているだけに、主役だからといってうかうかできません。1か月以上続く長丁場の稽古で、若手歌手達は自分たちと同じ目線で頑張る先輩の姿を見て、稽古に対する姿勢を学んでいきます。

 つまり、このチームワークの良さが《二期会の流儀》といえるでしょう。アンサンブルの良さということもできるでしょう。海外から参加する演出家や指揮者にもこのような現場の空気はすぐ分かるようです。例えばダブルキャストの稽古でも、チーム交代の休憩時間に次チームに今習った動作を申し送りする光景を見て、彼らは一様に、「休憩中に稽古をするなんて!」と驚き、「ダブルキャストで1か月の稽古では無理!」と断言していた演出家も、稽古終盤に向かってどんどん上がっていく歌手達のテンションをみて、公演のあとには「また一緒にやりたい」という発言になっていきます。

 『皇帝ティトの慈悲』に続いてコンヴィチュニーとともに『エフゲニー・オネーギン』を制作することになったのも、このような経験抜きには語ることができません。洋の東西を問わず、芸術家同士の真剣勝負は多くの果実を生みます。それがやがて歌手達自身の、そしてグループ全体の血肉となって進化していくのだと思わずにはいられません。(常務理事 中山欽吾)

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2008年06月27日 17:12

「ムジークテアター」  オペラの制作現場からーその15

 ベルリン・コーミッシェ・オーパは旧東独時代から原則全てのオペラをドイツ語で上演してきた歴史がありますが、その劇場を第二次世界大戦直後に創設したのは演出家フェルゼンシュタインでした。その彼が唱えたのがこの言葉です。彼は最低でも8週間の立ち稽古を行い、人間ドラマを完璧に表現できるまで徹底的に歌手達を鍛え上げたのです。この劇場でフェルゼンシュタインの助手として直接薫陶を受けた日本オペレッタ協会の寺崎裕則会長によれば「歌芝居」という表現になりますが、その著書「音楽劇の演出」には、それまでのオペラを「装置衣裳付き独唱会」としたフェルゼンシュタインの演出哲学が詳しく述べられています。〈従来の、「耳と目の悦楽」に新たに「心」を加えた。「心」とは演劇的な面、ドラマの部分である。観客は、オペラに「耳と目の悦楽」の他に、「心」の悦楽があることを知った。〉とあります。

 二期会は、創立50周年記念事業を契機にして幾つかのドイツの歌劇場と国際共同制作に取り組みました。これらのプロジェクトで起用した演出家は何れも欧州でも有数の評価を得ており、しかもこのドラマ重視の流れを組んだ方々だったため、我々は二期会オペラの制作を通じて期せずしてムジークテアター流オペラ制作を経験できました。これは我々にとって極めて重要な経験でした

 来日した演出家に共通していたのは、歌っている人は勿論ですが、その歌を聞いている相手の歌手がその歌にどう反応するかの表現こだわったことでした。ドラマは二人のダイアログが基本だというわけです。2分間のシーンに2時間以上をかけるのは珍しいことではなく、何度も繰り返して根気よく稽古をします。演出家自身が演技をやってみせるのですが、それを真似するだけとダメがでます。自分独自の身のこなしが反射的にできるようになるまで作り込んでいくのです。歌手は本来役者ではないので、このような訓練を受けて初めて身体で感情を表現できるテクニックを身につけていきました。

 稽古を繰り返す度に歌いながら演技をしますから、当然毎回フルヴォイスで歌うことはできません。ところが、演技のテンションはぎりぎりまで上げ、声を抜くというのは簡単なようで難しいテクニックです。身体までテンションが下がってしまうと、演技も緊張感を欠くことになります。できるまで何度も繰り返すことで、身体コントロールで集中度を上げていく濃密な稽古が、こうして1か月以上続くことになります。ただ厳しいだけではなく、演出家が目指すドラマの表現に達するまで、妥協することなく仕上げていくことの大切さを、参加した全員が共有できたことが大きな収穫だったわけです。

 このようにして出来上がった舞台は、観客の心をとらえて放しません。そこまでいけば、ドラマの時代背景が現代に変わっても、舞台装置が抽象的なものに変わっても、十分に成り立つだけの緊張感溢れるドラマが展開するムジークテアターが現実のものとなるのです。 (常務理事 中山欽吾)

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2008年06月18日 14:59

「楽譜を選ぶ」  オペラの制作現場からーその14

 ある演目のオペラ上演を計画する際、どのプロダクションでも同じ楽譜で上演するわけではありません。楽譜には色々な版が存在するからです。今回はその裏話をお話ししましょう。そんなの常識だと仰せのファンの方は、しばらく目をつぶっていてください。

 かつては、オペラの興行師が作曲家に依頼してオペラを作ることが多かったので、例え初日を開けても不評であればどんどん変更を要求し、人気歌手の技巧に合わせてアリアを作曲させて挿入したりと、随分生臭い話しがあったようです。時代や劇場の性格に応じて、セリフを入れた版とレチタティーヴォといわれる歌唱でアリアをつないでいく版が両立しているケースもあります。さしずめ「カルメン」はこのケースで、パリのオペラ・コミークでの上演を前提に作曲したビゼーのオリジナル版は当然セリフ入りのものでしたが当初不評でした。初演後まもなくビゼーは死んでしまって、代わりにギローがレチタティーヴォ版を作り大ヒットしたことはよく知られています。

 古いオペラでは、スコアが部分的に欠落したり残っていなかったりするケースがあり、後世の研究によって補完されたり、前記のような度重なる改作の中から決定版として出版したりすることも稀ではありません。複数の版があると、どれを選ぶかが問題となり、制作する側のこだわりとなります。

 一方、作曲された時代のオペラの上演環境もあって、4時間を超える長大な曲も多く存在します。現在は、途中カットして休憩込みで3時間半程度にすることが広く行われていますが、一方で無削除版と銘打って全曲完全上演を目指す動きもあり、観客にとって選択の幅は広がっています。このようなことが行われるのは、オペラは完全無欠の音楽というより、歌と音楽の力によって人間ドラマをはるかに説得力のあるものに変えていくという性格があるからですし、前述のように色々な版が並列で存在するという事情もあるのです。

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                  撮影 鍔山英次

 二期会ではモーツァルト年の2006年に日生劇場で「コジ・ファン・トゥッテ」(上記写真参照)を上演しましたが、この時は通常はカットされることの多いフェランドのアリアを演奏したのです。姉妹の恋人が変装して、それぞれ別の方を口説くという筋で、このシーンは最後まで抵抗していた姉のフィオリディリージがこのテノール泣かせの長大なアリアを聴く内に遂に陥落するという部分で、そのアリアを聴きながら彼女が悩みに悩む様子が演出の宮本亜門によって活写され、ドラマとして圧倒的な説得力を持ったことを思い出します。(常務理事 中山欽吾)

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2008年06月04日 15:56

オペラ劇場仕様の話し(2) 「ホールの響き」 オペラの制作現場からーその13

 クラシック音楽でホールの響きがどれだけ大切かは、例えばウィーンの楽友会協会ホールやニューヨークのカーネギーホールの名前を挙げるまでもなく、強調してもし過ぎることはないでしょう。中でもオペラは舞台上で歌う歌手達とオーケストラの掛け合いがその醍醐味ですから、舞台前面のピットから上部に向かって響いてくるオケの音に対して、舞台上の歌声をうまく乗せて、ホールの残響特性によって美しい響きにすることが大切です。

 舞台の上で歌う声は歌手のテクニックによって、例えピアニッシモでも遠くに飛ばせることができます。しかし、その途中で、床や舞台装置の壁でうまく反響し、オーケストラ・ピットから出てくる音と共鳴しつつ、更に会場の側壁や天井で色々な角度に反射して、シャワーのように客席に降って来ます。よい劇場と言われるホールは、様々に反響する音が直接飛んでくる音とお互いに重なり合っていく、ホールに特有の残響(ホールトーン)がバランスの取れた心地いい響きになっているわけです。

 舞台上でも、奥の方で歌う声は天井部分が吊りもの(舞台装置や布製の背景)を格納するフライタワーになっているので前に飛び難く、人の動きが激しくなった最近の演出では、できるだけ多くの席からオーケストラとバランスしたよい響きが聴けるように、背景や天井をしつらえた舞台装置で、舞台奥で横を向いて歌う場合でも、反響を含めた音量で客席に声を飛ばす工夫が行われています。

  舞台稽古での最終段階では、客席の各ポイントで音楽のバランスを確かめて、歌う位置やオケピットの深さを微妙に変えたりして音響バランスの調整をします。それでも、ごく稀ではありますが、どうしても舞台上の異なる場所で歌う声のバランスが取れないような時に、弱い場所の音を拾って響きを補強することがあります。できるだけ多くの客席から音楽を楽しんでいただくための、芸術表現として許されるぎりぎりの総合調整の一環といえるでしょう。(常務理事 中山欽吾)

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2008年05月30日 12:07

『ナクソス島のアリアドネ』立ち稽古始まる

%E3%83%8A%E3%82%AF%E3%82%BD%E3%82%B9%E7%A8%BD%E5%8F%A42.jpg この5月28日、待望の立ち稽古が始まりました。演出の鵜山仁氏は新国立劇場の演劇部門芸術監督の多忙なスケジュールの中を、これから公演の始まる6月26日に向けて、満を持して新演出に取り組みます。

 この日、稽古に先立って関係者が芸能花伝舎稽古場に集合、出席者の紹介、栗林理事長からの挨拶に続いて、演出家の挨拶があり、2005年の『メリー・ウィドー』以来久しぶりに二期会オペラの装置を担当する堀尾幸夫氏から舞台装置の説明、二期会初登場の衣裳美術家原まさみ氏から衣裳の説明などと続き、両キャストの見守る中を早速一幕から稽古が始まりました。

 稽古場には実物大の装置のモックアップが組み立てられ、このオペラの劇中劇という条件を、いかに東京文化会館で再現するのか、これから演出家とプランナーの秘策が徐々に明らかにされていくことになります。写真は左から演出助手の澤田氏、演出家の鵜山氏、作曲家役の谷口、小林の両氏。

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2008年05月27日 12:01

「オペラ劇場仕様の話し(1)」 オペラの制作現場からーその12

 ここ十数年の間に続々と建設された本格的なオペラ劇場仕様のホールは、特に多面舞台であること(舞台の上手、下手、奥に舞台と同じサイズのスペースが設けられているのが4面舞台)と、ホール自体の残響時間がオペラ上演に最適な設計となっていることが挙げられます。日本の多面舞台ホールは世界でも最先端の設備を持っているとさえ言われています。

 誤解をしていただきたくないのは、多目的に使われる各地のホールにも、設計段階から様々な工夫がなされ、素晴らしいオペラ上演空間のところが沢山あることです。会場の仕様を理由にオペラをやらないことはまずあり得ませんし、実際私たちの団体も永年全国各地の「本格的なオペラ劇場仕様ではない」会場で公演をしてきましたし、今後も変わることはありません。

 では、多面舞台と音響の意味するところは何なのでしょうか。今回と次回の2度に分けてお話しすることにしましょう。まずは多面舞台のホールからですが、平面図を見ると客席部よりむしろ舞台の方が大きく感じるほどの床面積を持っていて、各幕の舞台装置を右や左や奥から次々に出して来るには至極便利です。しかし、本来の意味合いは連日公演を続けるオペラ劇場にとっての作業の利便性です、つまり公演が行われていない時間帯には次の演目の稽古をやるための舞台装置が組み立てられ、終わり次第その夜の公演のために別の装置を仕込むといった。ですから幕毎に舞台装置を入れ替えるオペラでも、段取り次第で多面舞台を持たないホールで十分に上演が可能だというわけです。

 ちなみに、ヨーロッパの有名歌劇場でも完全な4面舞台がない例があります。年間に300回の公演を行っている二つの歌劇場のうち、ウィーン国立歌劇場では下手側の奥行きが舞台の半分くらいしかなく、バイエルン州立歌劇場では片側の袖は通路だけ、平面図を見ると田の字です。

 日本が世界に誇るホールをできるだけ多く活用するためには、単独では予算の制約がある複数のホールや制作団体が協力して、制作自体に多額に費用がかかるオペラを1回でも多く公演することも大切です。その意味でこの2月と3月、びわ湖ホール神奈川県民ホールの共同制作になるオペラ『ばらの騎士』の成功は、二期会が制作団体として協力(共催)させていただいたことも含めて、今後に大きな示唆を与える画期的なプロジェクトだったと思います。(常務理事 中山欽吾)

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2008年05月09日 17:31

「原語上演」  オペラの制作現場からーその11

 オペラを作ると言っても大変な時間と手数がかかります。今回はその歌詞についてお話ししましょう。歌手達は出演が決まればそのプロダクションで指定されている楽譜の譜読みから始め、やがてコレペティトゥアによる音楽稽古に続いて、複数の出演者達によるアンサンブル音楽稽古まで済ませた時点で立ち稽古に移ります。この段階で音楽と歌詞が頭に入っていることが要求されます。

 昔の二期会公演だと日本語訳詞上演が普通でしたから、自分の歌う歌詞も、相手役の歌っている内容も分かりましたが、1986年頃から字幕付き原語上演が増えて行くにつれて、原語指導が必要となってきました。オペラ歌手を目指す人たちにとっては、イタリア語、ドイツ語は上演頻度が高いためにある程度基礎的な素養が付いてきますし、特定の国のオペラを歌うために平素からその国の言葉を勉強している歌手もいます。しかし、それ以外は公演の都度覚えて歌わなければなりません。オペラがドラマである以上相手役の歌っている内容を理解しなければ、その歌に対する自分の反応を返すことはできませんから、何語で歌うにせよドラマの内容理解を深めることは演技を深めていく前提となるわけです。

 今年度に予定している二期会オペラをみると、『ナクソス島のアリアドネ』はドイツ語、『エフゲニー・オネーギン』はロシヤ語、日生劇場共催公演『マクロプロスの事』はチェコ語、『ラ・トラヴィアータ』はイタリア語と4本全て使用言語が異なるという大変なことになっています。勿論専門家による原語指導をつけますが、単なる会話と歌う場合のイントネーションや発音の強調などは異なるので、人選は誰でもネイティブであれば良いとは言えないのが苦労するところです。譜読みの前に歌詞の発音とその意味の理解をコーチについて行い、音楽稽古の段階で歌い回し(ディクション)を修正して、初めて立ち稽古に臨みます。

 一人で演奏するのと違い、大勢の出演者達のレベルを合わせ有機的な結びつきを強めることで、初めて素晴らしい舞台が出来上がることを思えば、この「仕込み」ともいえる事前の準備が、公演の質を高めるために不可欠のステップだとお分かり頂けると思います。(常務理事 中山欽吾)

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2008年04月25日 17:16

「オペラと技術」 オペラの制作現場からーその10

 もう何年も前のことですが、筆者と同じエンジニア出身で、今は亡き大先輩S氏からご自分の関係する研究グループで、オペラにおける技術の進歩について話してくれとのご下命がありました。なぜオペラかとは思ったものの、氏は長いニューヨーク在住時代にMETでオペラにはまり、リタイヤ後は博覧強記のオペラ・ファンとして活躍されていただけに、筆者の知的好奇心をいたく刺激し、つい安請け合いをしてしまいました。

 引き受けたものの、実は何も分からず途方に暮れていたとき、ふと思いついたのが以前テレビで放映された、バロックオペラ劇場復元の物語でした。舞台機構は全て手動のロクロや滑車操作によるものですが、チェコの古都で行われたその舞台は、ローソクの明かりのなかで典雅に演奏された見事なものでした。早速録画を見直し、どこがポイントなのかを考えることから始め、その道のプロにも随分ご教示を頂いて、何とか約束を果たすことができました。

 S氏の意図は異業種から来た筆者の無知を知っていてわざと宿題を課したのかもしれませんが、取り上げたテーマは手動から電動への移行、音響、照明技術、特に光源の進歩、照明機器の進歩、映像投影方式と機器の進歩、セル原画からコンピュータアニメーションへの移行、広範なコンピュータの利用、など広い範囲に及び貴重な経験となりました。

 たまたまその時期に、偶然建築家になり立ての長男がさるオペラ劇場の建設現場で設計・建築監理に従事していました。最新鋭の舞台機構や照明装置や映像投射プロジェクターのことを教えて貰い、その技術の進歩に驚くばかりでしたが、彼から届いたメールには、こんなことも付け加えられていました。

「人間がロープを引くバトンが動き、レンズで集光されたろうそくの炎の揺らめきが照らす舞台の、圧倒的な人間の力、血の通った臨場感というものは、今日の劇場では薄れてしまっています。またデジタル制御に伴うシステムのブラックボックス化は、舞台という一回性の芸術において、時に致命的なトラブルを生んでしまうことがあります。バトンが不測の急停止を起こしても、どこかのインターロックが作動したのか、あるいは機械トラブルなのか、はたまた単純な入力ミスなのか直感的に把握できず、パニックに陥っている内に演出の一瞬のタイミングを逃してしまうような。高度なセンサーを備え臨機応変に判断ができる、無段変速機としての人体は、どんなに高度になったシステムに囲まれても、その中心にあることは変わりないですね。父の仕事の面白さが分かってきました。」(常務理事 中山欽吾)

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2008年04月16日 12:18

「現場感覚」 オペラの制作現場からーその9

 よいオペラを作るには?という問いについて、〈よい〉を〈高品質の上演レベル〉と置き換えてみます。個人芸術家の至芸とは異なり、オペラは大勢の芸術家や技術者達の共同作業ですから、仕事の仕組みはまさに建設工事のプロジェクトとおなじです。

 下手な例えですが、素晴らしい設計でも手抜きをすれば欠陥だらけの建物しか立たないという点ではオペラも同じです。品質を高めるには、現場で発生するさまざまな問題を一つの方向性を持って解決し、まとめ上げていく作業が不可欠ですから、調整役つまり制作スタッフは「個と全体」の両方の視点でチームのバランスを見ていることが大切で、少なくとも毎日の現場を熟知していなければできないことです。

 「三現主義」という聞き慣れない言葉があります。〈現場〉〈現状〉〈現実〉をいうのですが、問題が起きたときに現場に行って現状を調べ、現実を観て方策を決めて実行するという、生産現場での品質作り込みの鉄則ですが、実は世の中の全ての行為に共通する真理です。他ならぬ筆者もかつて産業人時代に実践してきたので、オペラの世界に身を投じたとき、オペラの世界でも現場感覚が大切だということが分かったのは我が意を得る経験でした。

 上演レベルといえば、音楽は勿論のこと舞台装置、照明、衣裳などの美術的要素の他に、最近のようにドラマの表現を重視する演出が主流になると、舞台上での演劇的要素の完成度も重要度を増しています。その全体を最終的な舞台でどう表現するかは、まさに稽古の現場でなければ作り込みはできないわけです。

 稽古も終盤になると、歌う人とそれを受ける人の緊密な人間関係を描き出す感情の交錯や会話、客席からもはっきりと理解できるボディランゲージによる心理表現などが、ドラマの中にぐいぐいと引き込まれる大きな要素になっていることが実感できます。このドラマを指揮者に率いられたオーケストラと力の揃った歌手達による音楽が一体となって、舞台は一層感動的になるのです。

 観客のカーテンコールやアンケートに上演の成果がはっきりと反映されると、初めて裏で舞台を支えるスタッフ達は秘かな喜びに浸ることができます。オペラ作りの醍醐味というわけです。(常務理事 中山欽吾)

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2008年04月09日 18:11

「演目を決める」 オペラの制作現場からーその8

 オペラ団体が演目を決めるのは、その団体の性格や方向性を示す上で重要なステップです。例えば〈イタリアオペラの藤原歌劇団〉に対して〈ドイツオペラの二期会〉というのが二期会に貼られてきたレッテルですね。

 今年に入って、『ワルキューレ』に続いて、6月の『ナクソス島のアリアドネ』、自主公演ではありませんが、びわ湖ホール神奈川県民ホールとの共催公演『ばらの騎士』まで含めるとドイツオペラが3本続くので、「やっぱり!」といわれそうです。そこで実際はどうかと調べてみました。

 まず藤原歌劇団ですが、藤原義江引退後の1964年以降2005年までのデータをみると、イタリア約78%、フランス約11%、その他11%(内モーツアルト6%)と、文字通り〈イタリアオペラの藤原〉です。創立以来のデータもほぼ同様です。

 一方、二期会はどうかというと、モーツァルトを含むドイツオペラが40%(純ドイツ20%+モーツァルト20%)、次いでイタリアオペラが27%、あとはジャンルとして見たオペレッタ12%、フランス、日本が各8%、英米、ロシア、東欧を合わせて5%となります。イタリアオペラではヴェルディの『オテロ』や『マクベス』など日本初演が7本(委託制作や研究生卒業公演も含む)もありますから、むしろオールラウンダーといった方が当たっています。

 二期会では芸術監督制をとらず、委員会で芸術上の狙いや観客の開拓など色々な角度から論議を重ね、およそ3年先までの演目、演出家、指揮者などを決めています。このような中・長期レベルでの計画は、創立50周年記念公演の立案を始めた1999年頃から意識して行うようになり、2001年から3年間で9本の記念オペラを上演しました。その後毎年、計画のローリングを行っています。

 芸術の世界で合議制というのは奇異に感じられるかもしれませんが、今年度のラインナップを始め、年間4〜5本の公演を続けてきたこの10年を振り返ってみると、「二期会オペラ」の方向性が決してドイツオペラ偏重ではないことがお分かり頂けると思います。(常務理事 中山欽吾)


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2008年03月15日 15:55

オーディション オペラの制作現場からーその6

 最近の二期会オペラでは、時に思い切った新人の登用が話題になります。会場でファンの方から「中山さん、すごい隠し球だね!」などとお褒めを頂くと、自分で決めているわけではなくても、内心「してやったり」と嬉しくなってしまいます。そのような評価を受ける歌手は、まず間違いなくオーディションによって選ばれてデビューを飾った人たちです。沢山の優秀な歌手達がいる二期会では、オーディションは出演の機会を提供するための重要な「場」なのです。

 芸術監督制を敷いていない二期会では、キャスティングは財団の正式組織である10名からなるオペラ制作委員会の合議によって、役柄のイメージやアンサンブルのバランス等を考慮して決められます。公演意図や芸術レベルなどにより、主役級のキャストが重要なポイントになる場合には、特定歌手の指名が行われることもありますが、ほぼ毎回会員対象のオーディションが行われています。

 『フィガロの結婚』のスザンナのようなポピュラーな役は、100名を超す応募者となることもあり、『魔笛』の夜の女王のコロラトゥーラのアリアを何人もの歌手達が楽々と歌うようなオーディションを想像して頂ければ、誰を選ぶかの難しさを少しは想像していただけるのではないでしょうか。その中からダブルキャストで2名の出演者を決めるわけで、全会一致で決まるケースがある一方、選択を迷うほど僅差の歌手が10名を超える大激戦になり、結論が出ずに議論が長時間に及ぶことも稀ではありません。

 このように激烈な競争を勝ち抜いた歌手達にとって、冒頭の「隠し球」の話は大きな勲章となる一方で、選んだ委員にとっても嬉しい評価です。オーディションだけでは期待に反する歌手を選んでしまうリスクもあるからです。しかし長い目で見ると、結局は実力のある人が選ばれていくわけで、こうして頭角を現してきた人たちが多くなるにつれ、公演のレベルは確実に上がり、長い目で見ればキャスティングの妥当性が評価されることにもつながってくるのです。(常務理事 中山欽吾)

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2008年03月06日 12:02

「稽古場の苦労」 オペラの制作現場からーその5

日本のオペラ団体は専用の劇場を持っていません。これって、世界的に見れば結構不思議な存在のようです。しかし我が国のオペラ発展の歴史は、自前の劇場を持つ環境とはほど遠いものでした。上演可能なホールも、殆どはオペラ用ではなく多目的ホール、稽古も貸しスタジオで行うのが当たり前のことだったのです。

本舞台に合わせてデザインされた階段のある立体的な舞台装置の場合など、借りた稽古場の天井が低いと持ち込めませんから、階段の位置を稽古場の床にテープで貼り付けて、微妙な時間差をつけて上り下りする真似をしながら歌うとか、苦労は尽きませんでした。

ところが最近の二期会オペラの演出では、演技や舞台上での動きを重視するようになって深刻な問題が出てきました。本舞台上での通し稽古が借館期間の制約内では十分にできないという問題もあって、本番通りの動きができない稽古場では公演の完成度に影を落とす恐れが出てきたのです。公演のたびに、制作担当者は公演会場並みの間口や奥行きを持つスペースの稽古場はないかと探すのが悩みの種でした。

そんな時、廃校になった新宿区立淀橋第三小学校が芸能花伝舎として舞台芸術関係団体に開放されることになり、その体育館を稽古場として特定期間使わせていただけるようになったのです。まさに理想的な稽古場空間で、コンヴィチュニー演出の『皇帝ティトの慈悲』、『ダフネ』、故実相寺昭雄演出の『魔笛』と、舞台装置を持ち込んだ稽古が実現し、完成度の高い公演に結びついていったのです。
Tito.jpg
『ティト』では何と回転舞台まで仮設し、人力で回しながら稽古を敢行しましたが、同じように回転舞台を使う『魔笛』では舞台装置が大きすぎたため、歌手達が装置の表から裏へ移動するのに合わせて、制作スタッフの方が装置の周囲を回りながら稽古を進める事態となったのですが。(常務理事 中山欽吾)

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2008年02月26日 19:08

続々登場の歌い手達! オペラの制作現場からーその4

『ワルキューレ』、『ばらの騎士』という二つの代表的なドイツオペラを並行して制作した今回の公演は、何れもお客様から熱いご支持を頂くことができました。立ち稽古は何れも2か月近くに及びましたが、当初海外から招いた二人の演出家ともに、この期間でダブルキャストを仕上げるのは不可能と首を傾けていました。

しかし、幸いにもそれは杞憂に過ぎず、むしろ日本人歌手達の能力を強く印象づける結果となったのです。中でも『ワルキューレ』で二期会オペラデビューを果たした歌手は10名、何れもオーディションで選ばれ立派に舞台を務めてくれました。

実はこの時期、新国立劇場でも山田耕筰作曲の『黒船』の制作が行われていて、そこにも十数名の二期会会員が出演していました。6月にはR.シュトラウス作曲の『ナクソス島のアリアドネ』の公演が行われますが、キャストの過半はこれらの三作と重なっていません。

このように我が国を代表するレベルの公演に出演できる歌手達が続々と育ってきたのは、日本人の肉体的条件の向上、オペラ研修所の充実、音楽稽古から立ち稽古に至る長期間の充実した稽古、出演者同士のチームワーク、など幾つもの要素が重なった結果です。

歌手は舞台経験を踏む毎にジャンプするように実力が上がるのですが、長い制作期間を通じて、海外や新国立劇場で活躍する先輩歌手と一緒に過ごした濃密な時間そのものが、若い歌手達にとって何よりの刺激となったことも確かです。

我々制作を担当するものにとっては、どうすれば舞台経験を増やすことができるかが問われており、年間の制作本数や、演目毎の公演回数を何とか増加させようと決意を新たにしているところです。(常務理事 中山欽吾)

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2008年02月13日 19:10

佳境に入った『ワルキューレ』の稽古 オペラの制作現場からーその3

いよいよ来週に迫った『ワルキューレ』公演。秒読みに入った稽古場ではピアノによる通し稽古も終え、オーケストラの入った音楽稽古、そして会場の上野文化会館に場所を移してHP(総稽古)、GP(公演前の最終総稽古)へと進んでいきます。14日朝から会場の文化会館で舞台装置の仕込みが始まります。

今回の公演において『指環』4部作中の1本だけを取り出して上演するに当たっては、この作品が4曲の中でも音楽的に最も充実していることが挙げられますが、ドラマ的に見ても本作の中にはすでに序夜『ラインの黄金』の情報がかなり語られていることから、演出家のジョエル・ローウェルスは後に続く『ジークフリート』、『神々の黄昏』への物語の流れを意識することで、全体として密度の濃い作品に仕上げようとする意欲が感じられます。

また、自ら舞台美術も手がけており、ヴォータンのエゴに振り回される家族関係、父と娘の強い絆、そして神と人間、生者と死者といった対比を、深い洞察力に基づいた幻想的な舞台をもって描き出しています。

指揮棒をとるマエストロ飯守は稽古場において演出家とも緊密に打ち合わせを重ねながら、音楽を最大限生かした舞台にすべく稽古を重ねてきました。

いよいよその成果は来週明らかになります。(常務理事 中山欽吾)

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2008年02月05日 17:28

『ばらの騎士』公演余録 オペラの制作現場からーその2

公演情報でお伝えした今回の『ばらの騎士』は、「ばら戦争」とも揶揄されたように、この1年で異なるプロダクションによる4度目の『ばらの騎士』となりました。4本全部ご覧になったお客様から、今日のがベストだったとお褒めの言葉をいただいたほどのできばえとなりましたが、これは演出家ホモキがドラマとして人間関係を徹底的に活写した結果が一役買ったのではないかと思います。

その演出は、標題役(オクタヴィアン)よりむしろ元帥夫人に焦点を当てて時の移ろいが人間に与える憂愁と諦観を描ききっています。確かに作曲された時代、つまり第一次世界大戦前後のヨーロッパは、既存の権威が次々に崩壊していく変動の時代であり、このオペラに込められたメッセージはまさに「時の移ろい」なのです。

オックス男爵は、その時代の転換を理解せず、貴族と平民の関係の中でのみ自己を顕示しようとする、時代に取り残されたピエロとして、新興貴族のファーニナルは、自分の地位のためなら何でも自分の都合がよい解釈しかしない新興の俗物として描かれていますが、演出家はそうした状況をドラマの横糸にして、物語に喜劇性を際立たせることに成功しています。

ドラマとは人間同士の係わりに他ならず、歌っている人物の相手役はその歌われる内容に何らかの感応を受けていると、演出家はその心の動きを客席から感じ取れるようになるまで演技を要求しました。3分間の場面に1時間かけることも稀ではない猛稽古でした。全編にわたったこのような積み上げが本番で演じられた時、客席の感動は大きく深いものとなったのです。

ドイツの舞台ではシングルキャストを8週間かけて鍛えたホモキですが、演出助手による稽古は積んでいたとはいえ、彼自身は約1か月の来日でダブルキャストをここまで仕上げたことに深い満足の意を表しつつ、連日の稽古に耐え抜いて公演を成功させたメンバー一同に賞賛の言葉を贈って、帰国の途につきました。(常務理事 中山欽吾)

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2008年01月28日 16:30

「制作現場は超多忙」オペラの制作現場から—その1

二期会ブログに新しいカテゴリーを加えることになりました。
オペラの企画から公演までの舞台裏で進むさまざまなシーンを、折に触れてご紹介していく「オペラの制作現場から」シリーズです。どうかお楽しみに。

さて、この冬の東京二期会の制作部は史上最高ともいえる忙しさです。
オペラの中でも代表的な大作、『ばらの騎士』『ワルキューレ』の稽古が重なったからです。
目の前に迫った『ばらの騎士』はびわ湖ホール、神奈川県民ホールと初めての共同制作。
二期会が制作を担当しており、出演者には関西二期会やびわ湖ホールアンサンブルの歌手達も加わってソリスト22名、合唱48名の総勢70名。
一方、自主公演の『ワルキューレ』は合唱こそないものの、それでも28名のソリストを含む40名近い出演者たち。

まずこのシーズンで欠かせない関心事は健康管理です。これだけ出演者が多いと、いったん誰かが稽古場に風邪を持ち込むとパニック。密室での長時間の稽古で蔓延してしまう恐れが大きいのです。それに、両演目共にドラマ性が高く、演技指導は微に入り細を穿つきめ細かさ。数分間のシーンに何時間もかける演出家のこだわりに、現場は細心の注意を払います。
ただでさえチームワーク維持が難しい制作現場は、張り詰めた緊張が続く厳しさがあってこそ求心力が生まれ、本番での素晴らしい舞台が実現すると全員が信じることができるようになるにつれ、ぐんぐんとテンションが上がっていくのです。

昨年12月から立ち稽古が始まり、演出家のホモキ氏による連日の猛稽古をこなしてきた『ばらの騎士』は、いよいよ今週末にびわ湖ホールで初日を開けます。『ワルキューレ』も年明け早々から演出家のローウェルス氏が来日し、稽古は徐々に演出の全容が見えてきて、まさに佳境に入っています。(常務理事 中山欽吾)

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