佳境に入った『ワルキューレ』の稽古 オペラの制作現場からーその3

いよいよ来週に迫った『ワルキューレ』公演。秒読みに入った稽古場ではピアノによる通し稽古も終え、オーケストラの入った音楽稽古、そして会場の上野文化会館に場所を移してHP(総稽古)、GP(公演前の最終総稽古)へと進んでいきます。14日朝から会場の文化会館で舞台装置の仕込みが始まります。
今回の公演において『指環』4部作中の1本だけを取り出して上演するに当たっては、この作品が4曲の中でも音楽的に最も充実していることが挙げられますが、ドラマ的に見ても本作の中にはすでに序夜『ラインの黄金』の情報がかなり語られていることから、演出家のジョエル・ローウェルスは後に続く『ジークフリート』、『神々の黄昏』への物語の流れを意識することで、全体として密度の濃い作品に仕上げようとする意欲が感じられます。
また、自ら舞台美術も手がけており、ヴォータンのエゴに振り回される家族関係、父と娘の強い絆、そして神と人間、生者と死者といった対比を、深い洞察力に基づいた幻想的な舞台をもって描き出しています。
指揮棒をとるマエストロ飯守は稽古場において演出家とも緊密に打ち合わせを重ねながら、音楽を最大限生かした舞台にすべく稽古を重ねてきました。
いよいよその成果は来週明らかになります。(常務理事 中山欽吾)

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