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ピックアップアーティスト Vol.48 村上公太の今

Interview | インタビュー

新型コロナウィルスの感染症に係る入国制限措置により外国人歌手の出演が難しくなった2020年、新国立劇場の『夏の夜の夢』に急遽ライサンダー役で出演して、公演を成功に導き、2021年『蝶々夫人』では初役のピンカートンを堂々と演じた村上公太さんに話を聞きました。

2020年10月 新国立劇場オペラ
『夏の夜の夢』ライサンダー役
写真提供:新国立劇場/撮影:寺司正彦

―子供時代はどう過ごされていましたか。

ピアノが好きな少年でした。5歳の時、どうしてもピアノを習いたくて両親に土下座しました。条件として自分で自転車に乗って教室に通うこと!と言われ、その日から補助輪を取り、1週間で乗れるようにしました。この時が人生で一番努力したと思います(笑)

5歳のとき参加した夏祭りで一休み

中学、高校は吹奏楽部に所属しチューバやサックスを吹いていました。中学1年生の時、合唱コンクールの余興で先生方のピアノ伴奏を担当したのですが、その時舞台で演奏する楽しさを知りました。

吹奏楽部に所属していた中学時代

合唱コンクールでのピアノ伴奏

―「声楽家になりたい」と思うようになったきっかけはありますか。

高校1年生の頃、父が仕事でオペラのチケットを貰ってきたので、なんとなくついて行きました。1996年オーチャードホールにて『蝶々夫人』でした。今現在、当時のキャストさんやスタッフさんの情報を見るとそれはもう錚々たる方々で感動と衝撃で、ただただボロ泣きしました。帰り道、父に「これやりたい」と言ったのを覚えています。

―声楽家になるために、どのような勉強をしましたか。また恩師との出会いがありましたら教えていただけますか。

オペラ歌手になりたくて音大に入学しましたが、入学時に大きな夢があったかというと正直ありませんでした。可能性が現実に見えてこないと夢を見ることすら虚しいと感じていたからです。ですが目標は具体的にたくさん持っていました。「ブレスを長く、歌っても疲れない身体作り」といったフィジカル面から、正確な発音や作曲家の意図を楽譜から読みとるなどのオペラを歌う上で必要な要素全てです。とにかく授業やレッスンで得られるものは吸収し、素晴らしい歌手の息遣いや所作、音楽への取り組み方を真似しながら少しずつ自分のオペラ歌手像を確立していきました。その後、経済的な理由もあり大学院進学よりも有益だと感じ、思い切って挑戦した新国立劇場オペラ研修所にてさらに3年間研鑽いたしました。研修所で出会った恩師セルジョ・ベルトッキ氏の熱心なご指導のお陰で比較的早い段階で自分の発声、自分の声に自信が持てたと思います。

読売新人演奏会で共演した
大学の同級生・三宅理恵さん(ソプラノ)と
2023年新国立劇場『ファルスタッフ』でも共演予定

恩師セルジョ・ベルトッキ氏(左)とパオラ・モリナーリ氏(右)

―弛まぬ努力が実を結び声楽家となり、夢の一歩を踏み出してからはいかがでしたか。

文化庁の留学を終えて帰国後、歌手としての仕事がなかったので1年以上音楽とは全く関係のない職場に就職しました。とにかく試聴会やオーディション等で声を聴いていただかないことにはチャンスは巡ってこないことを痛感し、そのような場に積極的に顔を出しました。