びわ湖・神奈川県民ホール『タンホイザー』無事に終演

春にはまだ早い3月10日、びわ湖ホールで幕を開けた、神奈川県民ホール・びわ湖ホール・東京二期会・京都市交響楽団・神奈川フィルハーモニー管弦楽団共同制作公演『タンホイザー』。

びわ湖面いっぱいに水鳥が浮かぶ風景、晴れた早春の週末、期待が高まります。
世界一流の歌劇場で活躍している演出のミヒャエル・ハンペは77歳。故ヘルベルト・フォン・カラヤンと長年にわたり共同制作を行ってきました。彼の舞台人生は、そのまま、社会の変動を映した数々の演出手法の歴史ともいえるでしょう。しかし、時の流行にとらわれない、彼の豊かで優しく、また自然な舞台には、聴衆からの大きな信頼があったようにも思われます。
びわ湖の評判がじわじわと広がって、神奈川県民ホールにもたくさんのお客様。
ワーグナーのオペラは、歌手にとっても、オーケストラにとっても“特別”です。
タイトルロールのタンホイザー役は「テノール殺し」と言われるほど、長丁場の耐久力と表現力が求められる難役。果敢に挑んだ福井敬は、颯爽とこの英雄を演じ、見事な歌唱の連続に熱い拍手が送られました。
写真とともに、公演の様子をお伝えします。
◆びわ湖公演(提供:びわ湖ホール)
◇神奈川公演(撮影:青柳 聡)

歓楽の世界ヴェーヌスベルクは、愛欲の女神ヴェーヌスが支配しています。妖艶なヴェーヌス(小山由美)が引き止めますが、ついに振り切って、タンホイザーは純粋な乙女エリーザベトが待つ、ヴァルトブルク城に帰ります。

◆ヴェーヌスベルクからかえってきたタンホイザー。


「誇り高い私の殿堂に挨拶します!」
エリーザベトの登場。愛するタンホイザーの帰りを喜び、晴れ晴れとした美しさ。清らかな乙女によって救済される、というワーグナー・オペラの定形。


歌合戦のシーン。領主、ヘルマン(妻屋秀和)。堂々として豊かな声が、客席に広がっていき、その存在感で圧倒しました。竪琴をかき鳴らす演技に、ヴォルフラム(黒田 博)、ビテロルフ(萩原 潤)、ラインマル(山下浩司)等は、オーケストラのハープ奏者と打ち合わせをするという念の入れよう。チームワークのよさを感じさせた場面です。


鮮やかに場面を制するエリーザベトを、佐々木典子、安藤赴美子が演じました。


タンホイザーは官能的な愛を歌いあげ、神聖な歌合戦を穢したとして、追放されてしまいます。


エリーザベトは、巡礼に加わってローマに赴いたタンホイザーが許されて帰ることをひたすら祈りますが、その願いは果たされませんでした。
底知れない喪失感を劇的に表現し、同時に清らかさと真の強さを見せ、伸びやかな声で聴衆を魅了しました。


再びヴェーヌスベルクの世界に向かおうとするタンホイザーを「エリーザベト」の名が救うのです。
彼の罪が許されないのと同じく、決して緑が生えることはない、と言われた枯れ木の杖が芽吹き、
奇蹟が起きます。姫の願いはかなえられ、タンホイザーは救済されました。

沼尻竜典芸術監督のもと、最高の歌手の布陣でお送りするびわ湖・神奈川のプロジェクト。
次回2013年公演は『椿姫』に決まりました。ぜひお越しください。
ありがとうございました。

帆かけ舟

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