「演目を決める」 オペラの制作現場からーその8

 オペラ団体が演目を決めるのは、その団体の性格や方向性を示す上で重要なステップです。例えば〈イタリアオペラの藤原歌劇団〉に対して〈ドイツオペラの二期会〉というのが二期会に貼られてきたレッテルですね。
 今年に入って、『ワルキューレ』に続いて、6月の『ナクソス島のアリアドネ』、自主公演ではありませんが、びわ湖ホール神奈川県民ホールとの共催公演『ばらの騎士』まで含めるとドイツオペラが3本続くので、「やっぱり!」といわれそうです。そこで実際はどうかと調べてみました。
 まず藤原歌劇団ですが、藤原義江引退後の1964年以降2005年までのデータをみると、イタリア約78%、フランス約11%、その他11%(内モーツアルト6%)と、文字通り〈イタリアオペラの藤原〉です。創立以来のデータもほぼ同様です。
 一方、二期会はどうかというと、モーツァルトを含むドイツオペラが40%(純ドイツ20%+モーツァルト20%)、次いでイタリアオペラが27%、あとはジャンルとして見たオペレッタ12%、フランス、日本が各8%、英米、ロシア、東欧を合わせて5%となります。イタリアオペラではヴェルディの『オテロ』や『マクベス』など日本初演が7本(委託制作や研究生卒業公演も含む)もありますから、むしろオールラウンダーといった方が当たっています。
 二期会では芸術監督制をとらず、委員会で芸術上の狙いや観客の開拓など色々な角度から論議を重ね、およそ3年先までの演目、演出家、指揮者などを決めています。このような中・長期レベルでの計画は、創立50周年記念公演の立案を始めた1999年頃から意識して行うようになり、2001年から3年間で9本の記念オペラを上演しました。その後毎年、計画のローリングを行っています。
 芸術の世界で合議制というのは奇異に感じられるかもしれませんが、今年度のラインナップを始め、年間4〜5本の公演を続けてきたこの10年を振り返ってみると、「二期会オペラ」の方向性が決してドイツオペラ偏重ではないことがお分かり頂けると思います。(常務理事 中山欽吾)

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