【レビュー】2012年11月公演 A.ライマン『メデア』(日本初演)が、平成24年度文化庁芸術祭賞「大賞」を受賞いたしました

明けましておめでとうございます。
おかげさまで二期会は昨年創立60周年を迎えることができました。
公益財団法人東京二期会および、株式会社二期会21では、2013年も創立60周年記念の充実したラインアップで、より多くの皆様にお楽しみいただけるよう努力してまいります。
61年目の二期会もどうぞよろしくお願い申し上げます。

さて既報の通り、2012年11月9~11日、日生劇場において二期会創立60周年記念公演・日生劇場開場50周年記念特別公演・読売日本交響楽団創立50周年記念事業と銘打ち日本初演に挑んだ、アリベルト・ライマン作曲のオペラ『メデア』が、このたびの平成24年度(第67回)文化庁芸術祭において芸術祭賞音楽部門「大賞」を受賞いたしました。
ご来場いただきましたお客様、ならびに公演関係各位に心より御礼申し上げます。
緊張感のある複雑に絡み合う音、登場人物の心理を立体的に示す跳躍する音型、さまざまな打楽器がずらりと並ぶオーケストラ、音楽的に非常に難しく、高いテクニックが要求される作品でした。演出の飯塚励生は、神話のドラマを現代にも通じる愛の喪失、母と子、富と権力、異文化と孤独、等、明快なメッセージとともに、この作品を具現化しました。
舞台写真とともに、公演を振り返ります。
写真撮影:三枝近志(◇…11月9・11日組、★…11月10日組)
<舞台写真はクリックで拡大表示します>


コルキス王の娘メデア(大隅智佳子)は、秘宝の金羊皮を地中深くに埋めます。


メデア(飯田みち代)は、夫イヤソン(宮本益光)とともに、コリントに逃れ、王クレオン(大間知 覚)の庇護を求めます。
かつてメデアを愛したイヤソンですが、今では心が離れていくのを隠そうともしません。


メデアの役に体当たりで臨んだ大隅智佳子。


しなやかな、誇り高い女王メデアを繊細に演じた飯田みち代。


コリント王の娘、クレオサ(山下牧子)はイヤソンとの再会を喜び、故郷を追われたメデア(大隅智佳子)に同情し、キターラを教えます。


そこへ現れたイヤソン(与那城 敬)は、歌を習うメデアを嘲ります。


メデアが誇りを傷つけられ、キターラを壊すと、かえってイヤソンは、クレオサ(林 美智子)との距離を縮めるのです。


メデアの子供は、クレオサのもとへと連れ去られます。
乳母のゴラ(小山由美)は、メデアに子どもを取り返すべきだと説きます。


使者(彌勒忠史)がコリントを訪れ、コルキス王とペリアス王の死に、イヤソンとメデアが関わった疑いで、匿っていることを咎め、国外追放を要求します。
華麗にして冷淡な使者の言葉が、メデアを次第に追い詰めていきます。


王クレオン(大野徹也)は、娘クレオサの夫となるイヤソンを庇いますが、メデアに対しては冷酷にも追放を告げます。


大畑浩恵の振付による、赤い衣裳のダンサーたち。
メデアの心の動きを表します。疑惑、嫉妬、復讐…。


夫の保身と愛の喪失を悟ったメデアは、次第に狂気にとりつかれます。


秘薬によって、クレオサの命を奪い、こども2人を自ら手にかけたメデア。
全てを失いさまようイヤソン。
金羊皮がもたらした運命を、メデアはただ「夢でした」とつぶやくのです。

嬉しく楽しい歌ばかりでなく、苦しみや悲しみや恐れを歌う声にもまた、深い慰めを見出すことができる。
連続した音の重なりが震え、心の闇に降りていくような不気味さ、現実世界で見せることはない激情が押し寄せるとき、聴く人は、メデアに共感を覚えたのではないでしょうか。
中でも、純度の高い愛に対しては、束の間、静謐な音が聞こえてくるのです。
初来日となったライマン氏は、イメージした通りの音が鳴っている、と感激し、指揮の下野竜也氏をはじめ、歌手、オーケストラに大賛辞を送りました。
来秋もアリベルト・ライマン作曲、シェイクスピア原作のオペラ『リア』を今回と同じ下野竜也指揮、読売日本交響楽団の演奏で日生劇場にて日本初演します。栗山民也による新演出です。
ぜひご期待ください。

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