コンヴィチュニー 「オペラ・アカデミー in びわ湖」大成功!

5月公演『マクベス』、いよいよ演出ペーター・コンヴィチュニーが稽古場に合流しました。今回も1カ月にわたる感動の舞台作りが始まります!
今回、コンヴィチュニーは、3月25日~28日、びわ湖ホールの「オペラ・アカデミー」のため、先に来日していました。
そこで、オペラ・アカデミーの担当者・びわ湖ホール福島寿史さんに、お伺いして、コンヴィチュニー演出の「現場」をお伝えしたいと思います。
――びわ湖ホールで「コンヴィチュニー オペラ・アカデミー」を始められた経緯を教えてください。
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コンヴィチュニーは、日本に演出のための学校がないと知り、自らが指導にあたる「演出の学校」の開設を構想しました。
彼が提案した学びの方法は、自身の演出でオペラが作り上げられていく過程を間近で見ることによってペーター・コンヴィチュニーの哲学を吸収するという、非常に実践的なものでした。 
まずは東京でワークショップが行われ、翌年、マンパワーの面からも設備の面からも劇場としての充実した機能を備えているびわ湖ホールに白羽の矢が立ちました。当初は前年の東京でのワークショップのように、有名アリアに演出をつける、という内容を予定していましたが、開催2か月前にコンヴィチュニーから「オペラの全幕演出を」という提案があったことを受け、プッチーニ『蝶々夫人』全幕を扱うという運びとなりました。これが2010年8月、第一回目のワークショップとなりました。

――どういった方が参加されているのでしょうか?
演出家やオペラ歌手、およびこれらの職業を志す方を主な受講対象としています。また、劇場スタッフも対象となっているほか、研究者や評論家の方にも全国から多く参加いただいており、大きな注目を集めています。

――今年(2012年度)のテーマ、題材は何でしょうか?
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本来では、モーツァルトの『魔笛』を題材として夏にアカデミーを開催する予定でした。しかし、コンヴィチュニー氏の健康上の理由から中止とし、『魔笛』のワークショップは2013年の夏まで持ち越しとなりました。
今回のアカデミーは、コンヴィチュニーの強い希望により急遽開催が決定したため日数が少なくなったので、従来のワークショップ形式ではなくレクチャー形式で開催しました。
講義では4つの演目が紹介されました。そのうち3つ、ウェーバー『魔弾の射手』、ヴェルディ『ドン・カルロス』、ワーグナー『神々の黄昏』については、DVDを見ながらコンヴィチュニーの演出技法の解説がなされました。コンヴィチュニーは、常に受講者との意見交換を大切にしていました。上演の際に物議を醸したシーンでは、映像を止めて、「演出家がこのようなことをしてもよいのでしょうか?」などの挑戦的な問いかけをし、受講者の中からは、しばしば活発な議論が湧き起こりました。
また、2・3日目の午後に行ったワークショップでは、びわ湖ホール声楽アンサンブルのメンバーがモーツァルト『魔笛』のワンシーンを歌い演じ、コンヴィチュニーが、歌い手の個性を巧みに引き出しながら即興で演出をつけていきました。2013年8月のアカデミーでは、従来のワークショップ形式で、この『魔笛』を全幕通して取り組みます。

――コンヴィチュニーのアカデミーには、たくさんの「驚き」や「発見」があると思います。
   アカデミーの中で見られた印象的なシーンや言葉があれば、教えてください。

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ブレヒトの〈異化〉が演出の要所に意図的に採用されていることを、コンヴィチュニー自身から聞くことができたのは、大きな収穫であったと思います。
ベルトルト・ブレヒトは20世紀を代表する東ドイツの劇作家であり、彼が提唱した〈異化〉とは、日常において見慣れたものを、劇中に使用することでそのものに対する奇異の念を見る者に抱かせる、という手法です。コンヴィチュニーはこれを用いて、テレビやマスメディアを作品の中に組み込む試みを行っています。
たとえば、『ドン・カルロス』の3幕の火刑のシーンでは、休憩時間であるはずのホワイエに、縛られた受刑者の列や、盲目の大審問官、さらに現代風の衣裳に身を包んだ王の一団が登場し、その模様をテレビカメラで実況中継するという演出がなされました。このような〈異化〉によって、もはや私たちにとっては歴史となった火刑が、生々しい出来事として再現されることとなります。
150年前に書かれたテキストの内容を、今日を生きる我々にとって事実性をもって訴えかけてくるように再現する、そのための手段として、ブレヒトの〈異化〉を使用する。コンヴィチュニー氏の一見奇抜な演出は、決して恣意的な「読み替え」などではありません。むしろ、どうすれば原典を効果的なかたちで今日に再現することができるのかという問題提起であり、試みであると言うことができます。そのことは、「私は作品を破壊しようとしているのではありません」という一言に集約されているように思われます。

――コンヴィチュニーの『マクベス』に期待されることはありますか?
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「演出家としての私の使命は、演出を通じて幸福生成の方法を提示することです」と、コンヴィチュニーは語ります。個人と、その個人が所属する社会とは密接に関係していて、個人的な対立が社会全体の争いにつながるとも。争いを解消し、世界、ひいては人々が幸せになるためには、政治的なものであれ感情的なものであれ、個人的な対立に終止符を打たねばならないとコンヴィチュニーは言います。
欲と憎悪が生み出す人間の対立を描いた悲劇『マクベス』は、演出による幸福の提示というコンヴィチュニーのテーマにふさわしい作品であると思います。シェイクスピアの原作によるこの作品を通じて、ペーター・コンヴィチュニーがどのように幸福の方法を描き出すのか、とても楽しみです。
(回答者:公益財団法人びわ湖ホール 事業部 事業第二グループ 福島寿史さん)

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