【二期会ニューウェーブ・オペラ劇場『セルセ』キャスト・インタビュー】~(1)セルセ役 新堂由暁&澤原行正

二期会にヘンデル・オペラの祭典が戻ってきました!2015年『ジューリオ・チェーザレ』、18年『アルチーナ』に続いて上演する『セルセ』。今回も出演者と聴きどころをご紹介するキャスト・インタビュー・シリーズをお楽しみいただきましょう。

まずは、セルセ役のテノール新堂由暁(しんどう よしあき・5/22出演)と澤原行正(さわはら たかまさ・5/23出演)。
セルセは、紀元前5世紀に生きたアケメネス朝ペルシャの王クセルクセス1世のこと。
当時オリエントから地中海世界にかけて勢力を拡大していたペルシャはついにギリシャ世界と衝突、世にいう「ペルシャ戦争」が起こります。このオペラはまさにこの戦争に向かわんとする時の王を描いているとされています。玉座を継いだクセルクセス1世(セルセ)は、父のなしえなかったバビロニアとエジプトの反乱を制し、ギリシャへ――物語自体は完全なフィクションですが、血気盛んな王としてオペラにも登場します。

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――『セルセ』タイトル・ロール出演決定おめでとうございます。セルセはどんな人物ですか?

新堂・澤原: ありがとうございます!
新堂: ペルシャ帝国の若き王という役どころです。ぜひとも民に愛される人格者であってほしいところですが…本作でのセルセは、自身の恋の成就のために権力をも振りかざしてしまう、少々困った人物です。


新堂由暁 ©平舘 平

澤原: オペラの登場人物特有?とも言える内面の弱さであったり、弟アルサメーネへの不器用な愛や、ロミルダへの強い欲求、アマストレへの懺悔など、強い権力者としてだけでなく、人間としての甘さや弱さも感じさせる、そんな役です。ちょっと意地悪な言い方をすると、不器用極まりない、どうしようもない奴、といったところでしょうか(笑) また、初演がカストラートであったことから、メゾ・ソプラノや近年ではカウンター・テノールによって歌われることが多いのですが、今回は男声による「王としての魅力」を表現できればと思っています!

――セルセ役は「オンブラ・マイ・フ」が有名ですが、実は他にもたくさんいい歌があるのですね。二人からのおススメは?

澤原: 僕のおススメは、第2幕の「もしあなたが愛することを望むならSe bramate d’amar」です。
このオペラに登場するほとんどの人物が、ロミルダの妹アタランタに嵌められることになり、セルセも例外ではありません。
セルセは、アタランタから、ロミルダと恋仲と思っていたセルセの弟アルサメーネが、「実は私を愛しているのよ」と聞かされます(これが嘘)。だまされたセルセは、ロミルダに「俺の弟はお前を裏切っている、そんな男を愛するというのか!」と迫るのがこのアリアです。

 
澤原行正

新堂: 僕は最後のアリア「Crude furie」にもご注目いただきたく思います。
ようやく意中の女性が自分のものになると思っていたところに、その女性は自分の弟と結婚してしまい、婚約者には”恩知らず!”と罵られる手紙を送りつけられ、この世の全てを呪うかの如く激昂して歌うアリアとなります(※公演詳細ページの《ものがたり》をご参照ください)。
ロミルダが弟と結婚することになったのは自らの曖昧な物言いが原因ですし、婚約者を裏切ったのも他でもない自分自身なので、同情の余地が全くないのですが、楽曲は素晴らしいです(笑)

――なんだか、セルセはいつも怒っているんですね。それぞれの聴きどころは?

澤原: バロック・オペラの特徴ですが、このオペラ全体一人で歌う割合がかなり多く、二重唱は3曲だけです。3つのうちの1つがこのアリアの前にあるのですが、突然曲想が変わり、その後のレチタティーヴォも再び曲想が変わるのです。僕の主観ではありますが、そこがすごく不思議な印象を得るのです。まるでロミルダとセルセの噛み合わない感じが出ているような気がします。
セルセは冒頭から数多くのアリアがあり、このアリアは中でも最もエネルギッシュなものの1つです。

新堂: 音楽の表現技法の一つに、メリスマと呼ばれる歌詞を伴わず細かく音符を連ねていくものがあるのですが、最後のアリアではセルセの怒りや苛立ちを表現するためにその技法が実に効果的に使われていると思います。アジリタ、コロラトゥーラとも呼ばれたりしますね。
現代の楽器とは音のテンションや響きが大きく異なる、古楽器オーケストラによる演奏の音色や空気感ともあわせて、バロック・オペラの醍醐味を感じていただけるかと思います。

――二人それぞれの印象は?

澤原: 実は新堂さんとは東京藝術大学学部生の時からの付き合いなのです!僕は他大学を出てきましたので、彼は2学年上の先輩ですが僕が年上…二期会オペラ研修所では僕が2期上…という不思議な関係性です(笑)

新堂: もう10年以上の付き合いになりますね!一緒に朝まで飲み明かしたり、夜中にレンタカーで温泉地を目指したり、実に若者らしい一コマを共に過ごさせていただきました(笑)

澤原: 彼はとても人当たりが良く、その明るさと誠実さは歌にも表れています。そして、関西出身の人ならではの面白さも魅力でしょう(笑)

新堂: 実に多岐にわたるレパートリーをお持ちのテノールだという印象があります。才能をお持ちであることはもちろんのこと、常に学ぶことをやめない勤勉な姿勢が、現在に至るキャリアを裏打ちしているのでしょう。同年代のテノールと同じ現場にソリストとして立てる機会は稀有なものなので、存分に刺激を受けたいと思っております。

澤原: コロナ禍により食事等へもなかなか行けませんが、この公演が終わり、またお酒を交わしながらセルセ談義をしたいなぁと思っています!

新堂: いいですね!また朝までいっちゃいましょうか(笑)!?

――すでに盛り上がってきましたね!それでは、お客様にむけて、本番への意気込みをお願いします。

新堂: 3年に一度のバロック・オペラの祭典、二期会ニューウェーブ・オペラ劇場公演。私にとっては、二期会オペラ公演へのデビュー作品となります。是非たくさんのお客さまに足をお運びいただけますと幸いです。フレッシュなエネルギーをお届けできますよう、全力で臨みたいと思います!

澤原: 先日、演出の中村蓉さんが「オンブラ・マイ・フ」で歌われるプラタナスの木は成長が早く、このニューウェーブ公演にはぴったりだというお話をされていました。実は私の家の近所にもプラタナスの木があり、最近は出かけるときには必ずその木を見ながら歩いています。5月の公演時には、気持ちの良い新緑のもと、プラタナスに負けない大きな葉を広げ、舞台に立ちたいと思います。どうぞ劇場に足をお運びください!!

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▼『セルセ』公演情報ページはこちら
二期会創立70周年記念公演 二期会ニューウェーブ・オペラ劇場2021年5月公演 G.F.ヘンデル『セルセ』 - 東京二期会

2021年5月22日(土)17:00、23日(日)14:00 めぐろパーシモンホール 大ホール
指揮:鈴木秀美/演出:中村 蓉/管弦楽:ニューウェーブ・バロック・オーケストラ・トウキョウ

●公演のご予約・お問合せは《発売中》
二期会チケットセンター 03-3796-1831
(月~金 10:00~18:00/土 10:00~15:00/日祝 休)
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