2024年02月21日のエントリー

東京二期会オペラ劇場2024年2,3月公演 ワーグナー『タンホイザー』キャスト・インタビュー [6]ヴォルフラム役:バリトン友清 崇

『タンホイザー』二期会キャストのリレー・インタビュー第6弾は、ヴォルフラム役バリトン友清 崇です。
東京二期会ではR.シュトラウス『カプリッチョ』でデビュー以降、『魔笛』パパゲーノ、『サロメ』ヨカナーン、『パルジファル』クリングゾル、『トリスタンとイゾルデ』クルヴェナールほか、ドイツオペラの上演には欠かせません。コミカルな役もすれば悪役でもハマる、メインを張れば歌にも絵にもなり、脇にいても舞台が締まる…どのような役においても、必ず舞台をドラマティックに、かつ奥行きを与えている存在です。
この度のヴォルフラムと向き合う日々について、話を聞きました。

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ヴォルフラム役:友清 崇(バリトン)


――ヴォルフラムはどんな役でしょうか。どんな人物と思われますか?

友清: 騎士団の中では身分が高く、歌手の名手、リーダー的存在。昨年11月公演『午後の曳航』の少年団の1号役に続いてのリーダー格の役ですね、でも、今度はとても良い人です(笑)。
タンホイザーとは親友、そしてエリーザベトに想いを寄せているが、彼女の心はタンホイザーに向いているという、とても切ない思いを持った男です。
中世のドイツでの実在の人物で、「ヴォルフラム・フォン・エッシェンバッハ」と検索すれば詳しく知る事ができます。彼の書いた「パルチヴァール」はオペラ『パルジファル』の題材になっています。

――たしかに、首領1号は不良中学生の役でした(笑)。そして、タンホイザーも、ヴォルフラムも実在の人物から来ていますが、親友タンホイザーと想いを寄せていたエリーザベトを若くしてうしなったヴォルフラムが、後年『パルジファル』の物語を紡ぐと勝手に想像すると、ちょっとおもしろいですね。では、ヴォルフラム青年の聴きどころを教えてください。

友清: 叙情感の溢れるメロディー中心ですので歌の名手ヴォルフラムの優雅で上品な歌をお楽しみ下さい。
しかし、タンホイザーが巡礼から戻ってきた後のシーンからヴォルフラムの音楽がガラッと変わります。激しい調子になるのですが、ここからの私の声の使い方に注目して欲しいですね。クリングゾル、ドン・ピッツァロ、そして1号を歌ってきた役の真骨頂、ドスの効いた歌をお楽しみ下さい。

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2012年9月 東京二期会オペラ劇場『パルジファル』より クリングゾル役 (撮影:三枝近志)


――お客様には、友清さんの抒情的な歌と後半のヴィラン・ヴォイス、その両方をご堪能いただきたいと思います!
さて、ワーグナーのオペラというと、長大で哲学的で難解…というイメージがどうしてもあって、苦手な方も多いと聞くのですが、友清さんが考えるワーグナー・オペラを好きになるコツを教えてください。


友清: 分かりやすくいえば、ワーグナー作品の魅力の大半は序曲、間奏曲、そして合唱曲になると思います。先ずそこを楽しみにされて、さらにお目当ての歌手の歌唱に興味を持たれていれば、時間が長く感じることはありません!

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2016年9月 東京二期会オペラ劇場『トリスタンとイゾルデ』より クルヴェナール役 (撮影:三枝近志)


――2021年公演もビーテロルフ役で出演していました。キース・ウォーナー演出の『タンホイザー』の特徴を教えてください。

友清: 今回の演出で特徴的なのは、良く動くということです。
我々騎士達の登場シーンは先ず1m50cmくらいの所から飛び降ります。内心はメチャクチャ怖いです。落ちる音がドス、ドスと聞こえます。出番直後、歌う前に捻挫なんてことにならないようにしなければなりませんね。落下後も、舞台を右に左に後ろに前に動きまくります。 運動不足気味の歌手は息が荒くなっているのをおさえている様子です。
2幕の歌合戦の前も合唱団は椅子を頭の上に持ち上げ、動き回ります。ソリストも前に行ったり後ろに行ったりと、特にヴァルターとビーテロルフのソロは直前で走っているので、大変そうですね。

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2022年7月 東京二期会オペラ劇場『パルジファル』より クリングゾル役 (撮影:西村廣起)


――体力のある友清さんなら大丈夫かと思いますが、どうかお気をつけて! 同じヴォルフラム役の大沼徹さんの印象はいかがでしょうか。

友清: これまでにも多くのドイツオペラで共演させてもらっています。その中で特に印象的なのはクラウス・グート演出の『パルジファル』(2012)で大沼さんが演じたアムフォルタスですね。私はクリングゾルとは兄弟関係の設定の演出になっており、最後2人が並んで座り互いに無言の中、私が彼の膝に軽く手をあて終幕になるシーンは忘れられません。

――なんとも痛切というか、やるせないというか、言葉に表すのが難しい名シーンでしたね(写真2枚目参照)。

友清: 大沼さんも私も、初めてのワーグナーのオペラ出演だったかと思いますが、指揮者の飯守泰次郎先生の幾度にわたるマンツーマンの指導を受けた経験はヴォルフラム役に多いに生かせていける事と思います。

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2023年11月 東京二期会オペラ劇場『午後の曳航』より 1号役 (撮影:寺司正彦)


――最後に、お客様に意気込みをお願いいたします。

友清: 1988年2月東京文化会館で二期会が『タンホイザー』を公演いたしました。
参考「公演情報 - 二期会オペラ公演《タンホイザー》 | 昭和音楽大学オペラ研究所 オペラ情報センター」
この公演はテレビ放送されており、そのビデオ映像を今回のタンホイザー役の片寄さんから15年くらい前にお借りした事があります。あまりにハイクオリティーな公演です。我々出演者たちから見ると師匠にあたる世代の公演になりますが、私にとっては特にヴォルフラム役の木村俊光先生の歌唱は度肝を抜かれました。四半世紀前の学生の時、「夕星の歌」をはじめヴォルフラムのソロにあたる曲をレッスンしていただきましたが、その楽譜を先日発見しました。よく見ると先生の書き込みらしき文字もありました。こと細かな指導についていけず、落ちこぼれな自分が、まさかこの役を私が二期会公演で歌うなんて正直思ってなかったでしょう。試験前の門下の歌い合いでも先生を不機嫌にする始末。後でソプラノの先輩に、「夕星の歌」はとても好きだから上手に歌ってね、と温かい励ましを受けた事を思い出します。なので頑張りたいと思います!(笑)

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▼『タンホイザー』公演情報ページはこちら
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2024年2,3月公演 R.ワーグナー『タンホイザー』
- 東京二期会オペラ劇場
2024年2月28日(水)17:00、29日(木)14:00*、3月2日(土)14:00、3日(日)14:00* 東京文化会館 大ホール
指揮:アクセル・コーバー/演出:キース・ウォーナー/管弦楽:読売日本交響楽団
*…ヴォルフラム役 友清 崇 出演日

●お問合せ・ご予約:二期会チケットセンター 03-3796-1831
(月~金 10:00~18:00/土 10:00~15:00/日祝 休)
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