2024年02月06日のエントリー

東京二期会オペラ劇場2024年2,3月公演 ワーグナー『タンホイザー』キャスト・インタビュー [1]ヴォルフラム役:大沼 徹

2013年フランス国立ラン歌劇場にてワールドプレミエを迎えた、キース・ウォーナー演出によるワーグナー『タンホイザー』を、東京二期会は2021年に続いて上演!豪華な「パリ版」に準拠してお披露目いたします。
ニュージーランドの英雄テノール、サイモン・オニールも仲間入りして、連日の稽古が続いています。

二期会キャストのリレー・インタビューもスタートしましょう!
最初は、ヴォルフラム役のバリトン大沼 徹(先頭打者からホームラン王の風格!)。
思えば2010年『オテロ』イアーゴが激賞されてから第一線の活躍が続き、今や日本を代表するバリトンの一人。特に東京二期会では『パルジファル』『トリスタンとイゾルデ』『ローエングリン』『サロメ』とドイツオペラの大役が続き、ヴォルフラムは、2021年公演に続いての出演となりました。
飄々としながら(自然体?)、ここぞというときに的確に核心を突くスタイルは、その豊かな歌唱にも普段のまなざしにも表れるようです。公演に向けて話を聞きました。

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ヴォルフラム役 大沼 徹(バリトン)


――2021年に続いての出演となりました。 ヴォルフラムはどんな役でしょうか。どんな人物と思われますか?

大沼: タンホイザーへの友情と、エリーザベトへの恋愛感情に板挟みにされて、にっちもさっちも行かない人ですよね。絶対胃薬が手放せない奴だと思います。

――友情と恋愛感情の板挟み…ヴォルフラムに共感してくれる男子は多いのではないでしょうか。タンホイザーもエリーザベトも、ヴェーヌスも、ある意味常人離れしているところがありますものね。それでは、大沼ヴォルフラムの聴かせどころを教えてください。

大沼: そりゃあやっぱり「夕星の歌」だと思います。ちなみに、「夕星」って「ゆうづつ(*)」って読むらしいんですよね。40過ぎるまで「ゆうぼし」だと思ってました。まあ、どうでもいいんですけどね。

――われわれ業界内では、なぜか「ゆうぼしのうた」で定着してしまっていますね……。さて、大沼さんはこれまで数々のワーグナー作品に出演してきましたが、携わってきた中で、発見された「ワーグナーあるある」があれば教えてください。

大沼: ワーグナーの稽古をしている期間って、何故か性的な夢を見ることが多いんですね。
ワーグナーの甘美な、そして官能的な音楽がそうさせるのでしょうか。もしくは単に僕がおかしいのでしょうか。

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2021年2月 東京二期会オペラ劇場『タンホイザー』より ヴォルフラム役 (©Lasp Inc.)


――ヴォルフラムのところにもヴェーヌスの誘惑が、毎晩スピンオフでおこなわれていると。それだけ、ワーグナーの感情を揺さぶる音楽に浸っているということでしょうか。前回も舞台に立たれたキース・ウォーナー演出ですが、今回の舞台の魅力について、教えてください。

大沼: ワーグナーにおいてとても重要なテーマ「救済」の形が、様々な解釈を許容する形で提示されるところでしょうか。演ずる上では切なかったり,やるせなかったりするんですけど、だけど、とっても美しい舞台だと思います。

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2021年2月 東京二期会オペラ劇場『タンホイザー』より ヴォルフラム役 (©Lasp Inc.)


――欲望と救済という二項対立では語りつくせないところまでテーマを掘り下げている、とも言えるでしょうか。各シーンの色彩の変化も美しいですよね。本番に向けた意気込みをお願いいたします。

大沼: 混迷の時代にあって、我々歌うたい達は、生の歌を劇場に取り戻す事に全力を掛けてきました。奇しくも2幕には劇中劇として歌合戦が繰り広げられますが、そこには歌合戦以上のものが投影される筈だと確信して、目下稽古に励んでいます。劇場でお待ちしております!

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2016年9月 東京二期会オペラ劇場『トリスタンとイゾルデ』より クルヴェナール役 (撮影:三枝近志)


――前回公演がコロナ禍の真っただ中でした。今回の公演で、復活の想いをお客様にお伝えで来たらと思います。ありがとうございました。
稽古場では、ダブルキャストの友清 崇さんと一緒に稽古中と思いますが、最後に、友清さんの印象もお聞かせください。


大沼: もう、あれですね、ジャッキー・チェンにしか見えないんですよね。


(*)…「夕星」ゆうづつ:夕方、西の空に見える金星、宵の明星(みょうじょう)のこと。「ゆうつづ」とも読みます。

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▼『タンホイザー』公演情報ページはこちら
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2024年2,3月公演 R.ワーグナー『タンホイザー』
- 東京二期会オペラ劇場
2024年2月28日(水)17:00*、29日(木)14:00、3月2日(土)14:00*、3日(日)14:00 東京文化会館 大ホール
指揮:アクセル・コーバー/演出:キース・ウォーナー/管弦楽:読売日本交響楽団
*…ヴォルフラム 大沼 徹 出演日

●お問合せ・ご予約:二期会チケットセンター 03-3796-1831
(月~金 10:00~18:00/土 10:00~15:00/日祝 休)
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