2021年10月02日のエントリー

二期会名作オペラ祭『こうもり』キャスト・インタビュー~アデーレ雨笠佳奈「私もよく料理や掃除をしながら一人で歌っていますが、アデーレも絶対やっていると思いますね。」

〈二期会名作オペラ祭〉オペレッタ『こうもり』キャスト・インタビュー。第2回は、アデーレ役のソプラノ雨笠佳奈です。
雨笠は、今年5月の二期会ニューウェーブ・オペラ劇場『セルセ』のアタランタ役で二期会オペラ・デビューしたばかり。早くも東京二期会オペラ劇場公演のキャストに抜擢されました。
それでは早速インタビューしてまいりましょう。

202110_amagasa_kana_00.jpg 雨笠佳奈

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――『こうもり』アデーレが決まったときの心境を教えてください。

雨笠: オーディションの合格通知を頂いたときは心臓が飛び出るとはこのことか!と思うくらいびっくりしました。何かの間違いではないかと疑うほど(笑)
嬉しさを通り越して、どうしよう!という気持ちの方が大きかったです。
4年前の初演時、客席から観ていた舞台に自分が立つなんて想像しただけでも震えましたし、オペレッタ『こうもり』は二期会の十八番でもありますから、頂いた役目をしっかり果たさなければ、期待に応えなければと勝手に自分を追い込んでしまって…でもある日気が付いたんです。おこがましいなと(笑) 何を勝手に背負っているんだ!と。そんなにいろんなものを背負ったアデーレをお客様は観たいと思うか?と自分に問いかけたら少し気持ちが楽になりました。今はとにかく、今の私が感じ、そして表現できる最高のアデーレを生きたいと強く思っています。

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2021年5月『セルセ』より アタランタ役(撮影 三枝近志)

――5月の二期会ニューウェーブ・オペラ劇場『セルセ』のときのことも伺ってみたいと思います。本番に向けて、一番苦労したこと、乗り越えられたことを教えてください。

雨笠: 最大の苦労はやはりバロック・ピッチとの戦いでした。簡単に言うと、私たちがいつも慣れ親しんでいる音より半音低い音程になります。ただこれが厳密に言うと半音の幅とは少し違うのです…これによりいくら自宅で半音下で練習をしても稽古場に行くと何となく音程が上ずるという現象が生じます。
鈴木秀美マエストロから、バロック・ピッチ以外の曲を聞くのは禁止!とお触れを出され、段々とバロックの音色の中に溶け込むことができるようになりました。

――『セルセ』で得られた一番の喜びは何でしたでしょうか?

雨笠: やはり「出会い」でしょうか。共演者との出会いもそうですし、作品に出会えたこと、そしてバロックならではの、その時にしか生まれない変奏やヴァリエーションに出会えたり、音楽が今生まれた!という感覚に出会えたことが一番嬉しかったです。センスの良い変奏をするとオーケストラが模倣をしてくれるのですが、ナンセンスだと全くもって真似してくれないんです。「あ、今のはダサかったかぁ」とちょっぴり落ち込んだりするのも楽しかったですね。
オペラはロングラン公演があるミュージカルなどとは違い、2ヶ月近くかけて作り上げてもたった一晩か二晩で弾けて終わってしまう。本当にあっという間で、本番を迎えると私の場合は嬉しさよりも寂しさの方が上回ってしまうんです(笑)

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2021年5月『セルセ』より アタランタ役(撮影 三枝近志)

――そしてアデーレです!ご自身の考えるアデーレとはどのような人物でしょうか?

雨笠: 演じる役をあまり自分の方に寄せてしまうのは良くないのですが、女優(歌手)を目指しているという点では自分と共通点があると思います。私もよく料理や掃除をしながら一人で歌っていますが、アデーレも絶対やっていると思いますね。ドイツ語に「Adel:貴族・高貴・気品」という言葉があるのですが、ひょっとしてアデーレの名前はここから来ているのではないかと思うことがあります。神様がちょっと入れる薬を間違えてしまったせいで「女“優”」ではなく、「女“中”」に生まれてしまったけれど、本来の私はもっと気高くて才能あふれる人物なのよ!と思っている人だと思います。自分の欲求にとても正直なところは人妻であるロザリンデとの対比としても面白いですね。まさに猪突猛進タイプ。こういう人は強いです!

――最後に、お客様に『こうもり』の魅力をお伝えください!

雨笠: 何といってもウィーンの粋な音楽!自然と足が動き出すような曲ばかり。街を歩きながら聴いていると勝手に指揮をしていたりスキップしそうになったり、ちょっと変わり者になりかねません(笑)
物語もカラッとしていて良いですよね。うじうじ悩んだり泣いたりする人が誰も出て来ないというのも面白い。ロマン派のオペラではあり得ませんよね。ただこのオペレッタが作曲された時代背景にはコレラや株価の暴落など、作品の明るさと対照的な影がちらつきます。「憂いや悩みも忘れてしまおう」「全てシャンパンの泡のせい」この言葉たちもそれを考えると切なさを覚えます。その時置かれている状況下でも違うとは思いますが、観るたびに楽しいだけではない何かを感じさせるのもこの作品の魅力だと思います。

とはいえ!それはお客様お一人お一人に感じ取ってもらうこと!
ウィーンの粋で爽やかな風を感じにぜひ劇場までお越しください。ご来場を心よりお待ちしております♪

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▼『こうもり』公演情報ページはこちら
2021年11月公演 J.シュトラウスII世 オペレッタ『こうもり』 - 東京二期会オペラ劇場

2021年11月25日(木)18:30、26日(金)14:00*、27日(土)14:00、28日(日)14:00* 日生劇場
指揮:川瀬賢太郎/演出:アンドレアス・ホモキ/管弦楽:東京交響楽団
*…アデーレ 雨笠佳奈 出演日

●公演のご予約・お問合せは《発売中》
二期会チケットセンター 03-3796-1831
(月~金 10:00~18:00/土 10:00~15:00/日祝 休)
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