2022年06月10日のエントリー

7月公演 ワーグナー『パルジファル』~グルネマンツ役 山下浩司インタビュー「ワーグナーの‘生音’に触れてください!」

二期会創立70周年記念公演、ワーグナー『パルジファル』キャスト・インタビュー。今回はグルネマンツ役の山下浩司です。その、知的で、かつあたたかみのある低声に魅了される方も多いのではないでしょうか?
『魔笛』パパゲーノ、『フィガロの結婚』タイトルロールなどでモーツァルト歌手として高く評価されている中、2012年二期会創立60周年記念公演でグルネマンツを担い、貫禄ある歌唱で新境地を拓きました。その後さらにニューヨークで研鑽を積み、帰国後にはシューベルト「美しき水車小屋の娘」の全曲演奏で深化をみせていた山下。10年ぶりのグルネマンツとは、「感動の再会」であったようです。本番に向けて話を聞きました。

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2011年4月 東京二期会オペラ劇場『フィガロの結婚』より フィガロ役

――『魔笛』パパゲーノ、『フィガロの結婚』フィガロなどを演じてきて、10年前東京二期会『パルジファル』公演にグルネマンツ役で出演しました。その時のエピソードを教えてください。

山下: バッハ、モーツァルト、ワーグナー、この3人の作曲家は神懸かっていると常々思っています。
彼らの音楽を演奏する際は、作品に畏敬の念を持ち、自我を抑え、その神懸かった音楽に身を委ねることを心がけています。
そういった意味では受難曲のイエス、フィガロやパパゲーノとグルネマンツは変わりありません。ただしグルネマンツの台詞の量は圧倒的に多い。私が知っているバリトン、バス系の役ではダントツだと思います。
2012年はワーグナーを敬愛し、熟知されている飯守先生の棒の下、現在でも世界で上演されているグート演出の舞台に立てたのは幸運でした。
オーディションは大きな台風の日だったことを思い出します。その時は課題曲を準備するだけで必死でしたが、役をいただき、譜面を細部まで読み進めていくうちに震えるような感動が押し寄せてきました。ワーグナーの魅力に取り憑かれた瞬間でもありました。
今回10年ぶりに楽譜を開くと(すっかり音符を忘れていたということもありますが...)同じ感動の波が襲ってきて、「あ~~~~~!やっぱり凄い曲!」と1人で騒ぎながら再勉強しました。

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2012年9月 東京二期会オペラ劇場『パルジファル』(C.グート演出)より グルネマンツ役

――グルネマンツはどのような人物でしょうか。

山下: 一言で言うと変に真面目で、信仰心の厚い中間管理職でしょうか。誰かに一言尋ねられると、空気も読まず、サイドストーリーも含め長々と丁寧に説明する、そして愚痴も多い(笑)。きっと幼少期から信仰についての教育を徹底的に叩き込まれ、成功や失敗を重ね、それらを後進に伝えていくことへの義務感が強い。自然や人間への愛情も深い人だと思います。

――なんだか、日本人にも好まれそうな人物ですね。それでは、歌う分量が多いグルネマンツの見どころ、聴きどころを教えてください!

山下: その質問は困りますね…グルネマンツの、というよりも、『パルジファル』は見どころ、聴きどころが最初の1音から最後の和音まで、じわりじわりと4時間以上続くのです。

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2016年11月 東京二期会オペラ劇場『ナクソス島のアリアドネ』より 音楽教師役(左端)

――なるほど!一度耳にしたら離れることのできない、魅力というよりも魔力に近いワーグナーの音楽ですね。でも、あまりにも壮大で奥深いワーグナーの世界ですが、初めてワーグナー作品に触れたいと思われている方に、親しみやすくなるために何かアドバイスをいただけるでしょうか。

山下: 『ローエングリン』の「結婚行進曲」や『ワルキュー』の「ワルキューレの騎行」、『ニュルンベルクのマイスタージンガー』の第1幕への前奏曲など、誰でも一度は聴いたことがあり、すでに親しまれているように思いますが、これらを劇場で生音で聴いたら「ハマる」人は増えるでしょうね。『パルジファル』ではそれらに匹敵する前奏曲、1幕舞台転換の音楽や、2幕花の乙女たちの重唱、3幕聖金曜日の音楽があります。これらをセヴァスティアン・ヴァイグレさん指揮の読売日本交響楽団で聴ける。それだけでもワクワクするのに、演出は宮本亞門さん。もう堪らないです!まずは一度、生で音の「うねり」を体感していただけたら、沼への第一歩になるのではないでしょうか。逆に2度と沼に近づかない人も出るかも知れませんが……。

――最後に、本公演に向けまして、ファンの皆様にメッセージをお願いいたします。

山下: 何しろ「生音!」です。劇場にお運びくださる皆様、演者、スタッフと共に、このオペラの最後の和音を聴きたいです。また、グルネマンツは2幕以外ほとんど舞台上にいるので、応援していただけたら嬉しいです。

*     *     *


▼『パルジファル』公演情報ページはこちら
2022年7月公演 R.ワーグナー『パルジファル』 - 東京二期会オペラ劇場
2022年7月13日(水)17:00、14日(木)14:00*、16日(土)14:00、17日(日)14:00* 東京文化会館 大ホール
指揮:セバスティアン・ヴァイグレ/演出:宮本亞門/管弦楽:読売日本交響楽団
*…グルネマンツ 山下浩司 出演日

●公演のご予約・お問合せは《発売中》
二期会チケットセンター 03-3796-1831
(月~金 10:00~18:00/土 10:00~15:00/日祝 休)
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