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オペラ劇場仕様の話し(2) 「ホールの響き」 オペラの制作現場からーその13

 クラシック音楽でホールの響きがどれだけ大切かは、例えばウィーンの楽友会協会ホールやニューヨークのカーネギーホールの名前を挙げるまでもなく、強調してもし過ぎることはないでしょう。中でもオペラは舞台上で歌う歌手達とオーケストラの掛け合いがその醍醐味ですから、舞台前面のピットから上部に向かって響いてくるオケの音に対して、舞台上の歌声をうまく乗せて、ホールの残響特性によって美しい響きにすることが大切です。
 舞台の上で歌う声は歌手のテクニックによって、例えピアニッシモでも遠くに飛ばせることができます。しかし、その途中で、床や舞台装置の壁でうまく反響し、オーケストラ・ピットから出てくる音と共鳴しつつ、更に会場の側壁や天井で色々な角度に反射して、シャワーのように客席に降って来ます。よい劇場と言われるホールは、様々に反響する音が直接飛んでくる音とお互いに重なり合っていく、ホールに特有の残響(ホールトーン)がバランスの取れた心地いい響きになっているわけです。
 舞台上でも、奥の方で歌う声は天井部分が吊りもの(舞台装置や布製の背景)を格納するフライタワーになっているので前に飛び難く、人の動きが激しくなった最近の演出では、できるだけ多くの席からオーケストラとバランスしたよい響きが聴けるように、背景や天井をしつらえた舞台装置で、舞台奥で横を向いて歌う場合でも、反響を含めた音量で客席に声を飛ばす工夫が行われています。
  舞台稽古での最終段階では、客席の各ポイントで音楽のバランスを確かめて、歌う位置やオケピットの深さを微妙に変えたりして音響バランスの調整をします。それでも、ごく稀ではありますが、どうしても舞台上の異なる場所で歌う声のバランスが取れないような時に、弱い場所の音を拾って響きを補強することがあります。できるだけ多くの客席から音楽を楽しんでいただくための、芸術表現として許されるぎりぎりの総合調整の一環といえるでしょう。(常務理事 中山欽吾)

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