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『ウリッセの帰還』さまざまに姿を変える神々と人間の交感若さあふれるオペラの息吹きを届けました

6月6日(土)・7日(日)に北とぴあさくらホールにて上演いたしました、二期会ニューウェブオペラ劇場モンテヴェルディ『ウリッセの帰還』(ヘンツェ版・日本初演)はおかげさまをもちまして大盛況のうちに幕を下ろしました。
高岸未朝による繊細な演出、高関健の指揮による東京交響楽団の強力なサポートを得て、モンテヴェルディ独特の音世界を、現代オーケストラの響きで構築。若手中心の歌手陣のエネルギーを感じさせました。
モンテヴェルディの音楽による情景描写を“善意と悪意”6人のダンサーが視覚化。踊り、舞台転換、黒子、船などありとあらゆる事象を体現し、羊になり、神になり、召使になり、その効果は劇的でした。
2日間の華麗な舞台をご覧いただきましょう。
【6日(土)の舞台から】撮影:三枝近志

冒頭、プロローグのシーン。はかなさは地球の上にいるが、バランスを崩して今にも落ちそう。はかなさ(彌勒忠史)、愛(村田ゆう子)、時(嘉目真木子)


英雄ウリッセの妻ペネロペ(杣友恵子)は既に20年、夫の帰りを待ち続けている。


女官メラント(醍醐園佳)とエウリマコ(西岡慎介)。
とりとめもない幼い愛人たち。


英雄ウリッセ(大沼徹)。故郷に帰ることが許されない苦しみを力強く歌う。


忠実な羊飼エウメーテ(小林大作)は、安定した歌唱力、自然な演技で、客席を惹き付けた。老人の姿をしたウリッセを、そうとは知らずに心からもてなす。


ペネロペの邸に、息子テレーマコ(宮本英一郎)が帰ってくる。エウメーテとともに、ウリッセの帰還が近いことを告げるが、ペネロペは信じようとしない。


女神ミネルヴァ(大西ゆか)。人間の選択が正しいものであるように導く。ミネルヴァは、いつも明るい光とともに登場する。美しく賢明な女神を見事に演じた。


ついに、夫ウリッセその人と信じることができた瞬間、深い喜びと安堵に満ちた、ペネロペとウリッセ。


カーテンコール(撮影:堀 衛)

【7日(日)の舞台から】撮影:鍔山英次

待つ時間の長さに匹敵する長大なアリアを、魅惑的に歌うペネロペ(金子美香)。
深い表現力を持つメゾ・ソプラノの美声を存分に披露した。


エウリマコ(森田有生)とメラント(中野亮子)。
モンテヴェルディが描く世俗の恋の世界を、鮮やかに聴かせた。

 
変身前のウリッセ(小林昭裕)と、変身後のウリッセ。小林は、しっかりと鍛錬したバリトンの声の魅力を感じさせる。
 
牧童の姿をしたミネルヴァ(佐藤奈加子)がウリッセに、故郷の妻ペネロペの貞節を告げる。
真の姿ミネルヴァへの変身シーンは、歌舞伎の早変わりのよう。
佐藤は、低音から高音まで美しい響きで、気品あふれる女神を歌った。

ウリッセの息子テレーマコ(岡田尚之)が、ミネルヴァに連れられて、スパルタから帰国する。
岡田は明るく力強いテノールで、現在注目されている若手の一人。


3人の求婚者。左から、ピサンドロ(飯田康弘)、アンティノオ(金子宏)、アンフィノモ(高梨英次郎)。調子のいいピサンドロ、気ままな青年貴族アンフィノモ、アンティノオの悪役ぶり、となかなか楽しい演技を見せて飽きさせなかった。


大食漢イーロ(渡邉公威)。ウリッセが帰還し、宮殿を追い出され、食べる楽しみがなくなって死んでしまう。悲哀と可笑しさが同居する役を巧みに演じた。


紫はウリッセの色。


特殊な編成のオーケストラ。打楽器群は、オーケストラピットに入らず、花道に
紗幕貼りの部屋を作って収容された。


カーテンコール(撮影:堀 衛)

ご来場いただき、誠にありがとうございました。
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▼公演詳細はこちらをご覧ください
2009年6月公演『ウリッセの帰還』- 公演記録|東京二期会

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