2018年09月25日のエントリー

11月公演『後宮からの逃走』キャスト・メッセージ~ブロンデ役:ソプラノ冨平安希子&宮地江奈

11月公演モーツァルト『後宮からの逃走』キャスト・メッセージ紹介連載3回目は、ブロンデ役のソプラノ冨平安希子と宮地江奈です!

<ブロンデ>
ブロンデはスペイン貴族の娘コンスタンツェの侍女で、コンスタンツェとともにトルコの後宮に幽閉されています。太守に狙われているコンスタンツェの横で、ブロンデもまた守番のオスミンに迫られますが、そこは自由闊達で自尊心旺盛なイギリス娘(18世紀当時最も経済、思想とも進歩的だったのがイギリスでした)、まったく動じる気色を見せません。
明るく軽やかで、しかも芯の強さも持ち合せた女性ブロンデには、まさにぴったりの二人がキャスティングされました!

冨平安希子 (とみひら あきこ)
11月22日(木)・24日(土)出演

名門バイエルン州立歌劇場の研修所に学び、その本舞台で『魔笛』『ばらの騎士』など数多の経験を重ねてきた冨平安希子。抜群の表情豊かな歌唱で、国内ではオペラだけでなく、宮本亜門演出ミュージカル『サンデー・イン・ザ・パーク』に出演するなど幅広い活躍を見せています。今年は、7月『魔弾の射手』エンヒェンに始まり、ブロンデにつづいては2月『金閣寺』にも出演が決まっており、大活躍の年を迎えています!

《ブロンデ役について》
冨平: ブロンデは、コンスタンツェとともに海賊にさらわれトルコの太守セリムに売られてしまい、今はセリムの宮殿に監禁されています。
ブロンデは、この状況を嘆くしかしないコンスタンツェに希望を持つよう元気づける役です。「明るく希望を持つ者にこそ運はついてくる」という台詞がありますが、それが彼女の信念です。決断力に富み、太守ゼリムの家来であるオスミンさえも手玉にとってしまうようなしっかり屋です。

《ブロンデからみた見どころ・聴きどころ》
冨平: オペラ全体に東洋風の旋律が聞こえ、音楽的に非常に魅力的な作品です。
「私たちの国(=ヨーロッパ)ではこんな風に女性に振る舞うものよ」とオスミンに教えるブロンデのアリアから二幕が始まり、それに続く台詞で二人の関係性が垣間見えてきます。とても優美で可愛らしい旋律にのってオスミンにチクリと念を押す様子がよく表れていて、歌い甲斐があるとても好きな曲です。オスミンとのシーンは私自身も楽しみにしているシーンです。
もうひとつのアリア「なんという喜び」では恋人のベルモンテがついにやって来たという知らせをコンスタンツェにやっと伝えられる喜びを爆発させて、息継ぎする暇もないほどの目眩く旋律にのって一気に歌い上げます。
ベルモンテと再会できた時の四重唱では、その重唱の中で再会の喜びから一転してそれぞれの感情が変化し、ドラマがどんどん展開します。このオペラのキーともなる見応えのあるシーンになるのではないでしょうか。
ブロンデはこのオペラの中での一種の清涼剤のような存在だと思うので、その役割をきちんと踏まえて歌い演じたいです。

《『後宮からの逃走』のテーマ、メッセージ》
冨平: コンスタンツェ、そして彼女の侍女であるブロンデは、言ってみれば非日常の世界に今は身を置いていて、太守セリムから酷い仕打ちを受けるどころか手厚い待遇を受けています。ブロンデはセリムの家来のオスミンから好意を寄せられていて、その不器用さと無骨さが彼女には新鮮にうつります。ふたりとも自分の恋人を思いその好意を拒んではいますが、完全に拒んでいるわけではなく、非日常の中で揺らいでしまう自分自身と戦っているのではと思われる場面もあったりします。最後は監禁を解かれ、自分達の日常へと帰ってはいきますが、果たしてその日常が以前と全く同じものになるのかは疑問です。
コジ・ファン・トゥッテの結末にも似ています。その後の日常が劇中では描かれていないところも同じです。非日常な空間に置かれ、予測外のことが起こった場合、彼女たちのように日常では考えられないような考えや行動に陥ってしまうことは、現代に生きる私たちにも理解できないことではありません。彼女達の葛藤を見透かしたかのように詰るベルモンテとペドリロ、それに対してそんなことを思うなんてひどい、と開き直る女性陣が描かれる4重唱は今現在私たちのごく身近でもよく見られる会話ですし、それ以外の場面にもこのように覚えがあるような会話が頻繁に登場します。
現代に生きる私たちが感情移入しやすいキャラクターが多く登場するオペラですから、そんな点からもお客様にはより楽しんで頂けるのではと思います。


東京二期会2018年7月公演『魔弾の射手』より(撮影:三枝近志)
エンヒェン 冨平安希子(左)

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宮地江奈 (みやち えな)
11月23日(金・祝)・25日(日)出演
 
二期会オペラ研修所を経て、新国立劇場オペラ研修所に進んだ宮地江奈。その間、冨平と同じバイエルン州立歌劇場研修所とミラノ・スカラ座にも学び、修了した今年5月、二期会ニューウェーブ・オペラ劇場『アルチーナ』モルガーナ役でデビューを果たしました!
『後宮からの逃走』ブロンデ役の後も、来年6月再び日生劇場にて『ヘンゼルとグレーテル』露の精、眠りの精役で出演を予定しており、今後ますます目が離せません!

《ブロンデ役について》
宮地: いつも前向きで、人生を明るく楽しく生き抜く術を知っている女性だと思います。
「物事は考え方次第で、悪い方向に考えたら、本当に悪い方向に転んでしまいます!」と、いつもコンスタンツェを励まし、発破をかけます。セラムに囚われているような状況でも、目の前にある楽しいこと、美しいものを見つけられる柔軟さと、傲慢なオスミンにも全く物怖じをしない強さ、どちらも持ち合わせているのが、彼女の魅力です。

《ブロンデからみた見どころ・聴きどころ》
宮地: どのようなシーンになっていくのか、私自身とても楽しみなのが、オスミンとのやりとりです。短い台詞のシーンですが、最初は偉そうだったオスミンが、たったの数分でブロンデに言い負かされるシーンがあります。
今回たまたま、二人の体格の差も相まって、より面白いシーンになると確信しています!

《『後宮からの逃走』のテーマ、メッセージ》
宮地: やはり登場人物の恋愛模様かと思います。自分の恋人とは全く違うタイプの男性からの猛アプローチを受け、それに対して女性陣の心は動いてしまうのか?それとも、全く動じないのか?それとも、理性を保ち、心とは反対の行動をとるのか?登場人物たちの、細かい感情の移り変わりが楽しめるオペラではないでしょうか。
悩めるコンスタンツェと、それを励ますブロンデのやりとりは、まるで今の「女子会」の会話みたいですし、恋愛における「嫉妬」や「疑い」は、きっと今も昔も変わらない、不動のテーマだと思います。
自分と近いキャラクターを見つけて、共感して、どっぷりとこのオペラの世界に浸って頂きたいです!


二期会ニューウェーブオペラ2018年5月公演『アルチーナ』より(撮影:三枝近志)
モルガーナ 宮地江奈(左)

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▼『後宮からの逃走』公演情報ページはこちら
2018年11月公演 W.A.モーツァルト『後宮からの逃走』 - 東京二期会オペラ劇場

 2018年11月22日(木)18:30、23日(金・祝)14:00、24日(土)14:00、25日(日)14:00 日生劇場
 指揮:下野竜也、演出:ギー・ヨーステン、管弦楽:東京交響楽団、合唱:二期会合唱団
 〈主催〉公益財団法人東京二期会
 〈共催〉公益財団法人ニッセイ文化振興財団【日生劇場】

●お問合せ・チケットのご予約は
 二期会チケットセンター 03-3796-1831
 (月~金 10:00~18:00/土 10:00~15:00/日祝 休)

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