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11月公演オペレッタ『メリー・ウィドー』華やかに終幕!

二期会が初めて『メリー・ウィドー』を上演したのは1970年。以来、二期会の人気演目となりました。
パリを舞台に、莫大な財産を相続した若く美しい未亡人ハンナをめぐる恋の鞘当てが描かれるオペレッタ。若い勢いのある指揮者、下野竜也を迎え、東京交響楽団が奏でる親しみやすいレハールの音楽、日本語上演ということもあって、出演した歌手も客席と一体になって沸いた公演でした。テンポよく小粋な演出で客席を楽しませた山田和也、主役ハンナを演じた澤畑恵美、永吉伴子をはじめ、役者が揃った公演を、舞台写真とともにご紹介します。
◇19,21日キャスト(撮影:鍔山英次)
■20,23日キャスト(撮影:三枝近志)
■ 大富豪の未亡人ハンナ・グラヴァリが、外国人と再婚してしまったら、その財産が外国に流れ出て、財政危機に陥ってしまう、と頭を悩ませるポンテヴェドロ国の外交官たち。
左から
クロモー:村林徹也
ミルコ・ツェータ男爵:池田直樹
ボグダノヴィッチ:三戸大久 

■ ツェータ男爵の若い妻ヴァランシエンヌは、パリの青年カミーユ子爵といい雰囲気に。

ヴァランシエンヌ:坂井田真実子(左)
カミーユ・ド・ロジョン:小原啓楼 

◇ ハンナがパリの伊達男たちに囲まれて賑々しい登場。

ハンナ・グラヴァリ:澤畑恵美(中央) 

■ ハンナ(永吉伴子)に群がるパリ男たちのお目当ては、やっぱり財産?

ハンナ・グラヴァリ:永吉伴子(中央) 

◇ ツェータ男爵が扇を手にしているのを見て、驚くヴァランシェンヌ。その扇にはカミーユ(上原正敏)の愛の言葉が書かれているので大慌てです。ヴァランシェンヌの火遊びを知っている官邸の使用人ニェーグシュは、ツェータ男爵を前にしどろもどろ。
左から
ニェーグシュ:鎌田誠樹、ヴァランシェンヌ:菊地美奈
ミルコ・ツェータ男爵:加賀清孝、
カミーユ・ド・ロジョン:上原正敏 

■ ニェーグシュ役の鎌田誠樹は全日出演、『メリー』の立役者ともいうべき大活躍でした。 

◇ 昔の恋人ダニロ伯爵に再会したハンナ。財産目当てと思われたくないダニロは、ハンナに本心を打ち明けることができないばかりか、「愛している」なんて絶対言わないと誓う。そんな風ではハンナも素直になれないですよね─と客席から溜息。ダニロ役の星野は、2005年『メリー・ウィドー』でも同役、冷静沈着ですがハンナにはからきし弱い、ダンスも台詞も完全にダニロそのもの、多才ぶりを発揮しました。
ハンナ・グラヴァリ:澤畑恵美(左)
ダニロ・ダニロヴィッチ伯爵:星野 淳 

◇ 2幕。ハンナ邸で開かれた、故郷ポンテヴェドロ風の夜会。
ハンナが故郷に思いをはせながら歌う美しい「ヴィリアの歌」。
ハンナ・グラヴァリ:澤畑恵美(中央) 

◇ 気まぐれな妻に振り回される男たちが歌い踊る「女、女、女」は『メリー・ウィドー』のハイライト。
左から
カスカーダ子爵:大川信之、プリチッチュ:米谷毅彦
クロモー:福山 出、ミルコ・ツェータ男爵:加賀清孝
ダニロ・ダニロヴィッチ伯爵:星野 淳
ボグダノヴィッチ:小川裕二
サン・ブリオッシュ:北川辰彦 

■ メリー・ウィドー・ワルツの調べにのって踊るハンナとダニロ。ダニロ役の桝は、若々しい輝きのある声とさっそうとした演技で二期会オペラデビューを飾りました。

ダニロ・ダニロヴィッチ伯爵:桝 貴志(左)
ハンナ・グラヴァリ:永吉伴子 

 

■ 3幕。ダニロが通いつめるマキシムをしつらえたハンナ邸の大広間。この華やかさに、思わず客席も盛り上がります。 

◇ ハンナが再婚したら、財産の相続権は消滅すると聞いて、安心したダニロは、やっとハンナに「愛している」と言えました。

舞台中央
ハンナ・グラヴァリ:澤畑恵美
ダニロ・ダニロヴィッチ伯爵:星野 淳 

19,21日キャスト カーテンコール
(撮影:堀 衛) 

20,23日キャスト カーテンコール
(撮影:堀 衛) 

ポンテヴェドロ風の楽しい踊りを披露したダンサーたち、マキシムの踊り子をつとめた若手歌手たちにも多くの拍手をいただきました。
皆様、ご来場ありがとうございました。
(写真をクリックすると拡大してご覧いただけます)

▼公演詳細はこちらをご覧ください
2010年11月公演『メリー・ウィドー』- 東京二期会

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公演後記 R.シュトラウス最期のオペラ『カプリッチョ』

11月の連休中(20日~23日)、日生劇場に於いてリヒャルト・シュトラウス作曲『カプリッチョ』を上演致しました。
ジョエル・ローウェルスの演出ノートから
1942年(この『カプリッチョ』が作曲された年)という年の政治状況を鑑みれば、シュトラウスにとって作曲活動は困難を極めたはずである。またこの年には旧友のシュテファン・ツヴァイク(*)が、ヨーロッパの未来に絶望して自らの命を絶つという傷ましい出来事もあった。
(*)…編集者注:才能豊かなオーストリアの作家
R.シュトラウスが、最晩年に、この世に遺していった『カプリッチョ』。音楽か言葉か、一つをとれば、一つを失う、二つは一つ、その意味を深く問いかける公演となりました。
その舞台をご紹介します。
☆印…20・22日組キャストから(撮影:鍔山英次)
★印…21・23日組キャストから(撮影:三枝近志)

連合軍の爆撃を受けて、廃墟となったパリの邸宅に、フラマン(望月哲也=左)とオリヴィエ(石崎秀和)がやって来て、憧れの人に捧げた楽譜と詩、それに肖像画を隠します。二人はユダヤ人で、ヒットラー率いる秘密警察に追われています。 


劇場支配人ラ・ロシュ(山下浩司=左前)、音楽家フラマン(児玉和弘=右)に、詩人オリヴィエ(友清 崇)。新しいオペラブッッフォを作ろうと盛り上がっています。 


気心知れた兄伯爵(成田博之)と妹の伯爵令嬢マドレーヌ(釜洞祐子)。哲学者、ということになっているけれど、なかなか洒落っ気もあり、恋にも気楽な伯爵と、チャーミングで快活、そして芸術に非常に深い共感を示す妹。親密でまた教養あふれる当時の貴族のサロンをのぞいている気分になります。 


女優クレロン(加納悦子=中央右)に夢中の兄(初鹿野 剛=中央左)と、その兄をからかう妹の令嬢(佐々木典子=中央)。 


思いを寄せる女優クレロン(谷口睦美=左から2番目)の登場に、嬉しさいっぱいの伯爵。谷口は、ミステリアスで魅惑的な女優を見事に演じ、その飲みっぷり、女優っぷりに客席も盛り上がります。 


美しいものにすぐに熱を上げる伯爵は、花のようなバレリーナ(伊藤範子)に、さっそく関心を示し、せっかく少し気を許したかのようなクレロンの機嫌を損ねます。 


一心不乱に床を掃き、窓を磨く─伯爵家の兄妹が幼い頃からこの家に長く勤めているのであろう年老いた召使い(久保たけし=中央後姿)。ついつい眠り込んでしまうこともあるけれど、小さな踊り子たちに優しい、その不思議な存在感に、次第に惹きつけられたお客様も多いのでは? 


小さな踊り子たち。 


イタリア人歌手たち(羽山弘子と渡邉公威)。何事も大げさなイタリアオペラを風刺して、ちょっぴり皮肉に、ユーモラスに描かれていました。 


作曲家フラマンと詩人オリヴィエは二人ともマドレーヌに心を奪われています。マドレーヌはそのことを知っていますが、きっと二人とも愛していたのです。でも今は作曲家が少し優勢の様子。 


R.シュトラウス・オペラの麗人といえば、佐々木典子。気品溢れる歌唱は、舞台をより格調高いものへと導きます。
─オーストリア留学時代に、身分ある方々とお会いする機会がたびたびありました。「その洗練された物腰、話しかける時の頭の角度や手の仕草などは、舞台に立つ度蘇る光景です。でも彼女たちの心の奥までは判りませんでした。私は結局、シュトラウスのオペラでその内面を覗き込んでいるのです」─ぶらあぼ11月号より 


クライマックスの八重唱。 


劇場支配人ラ・ロシュ(米谷毅彦=右)の大演説は超難曲。見事なドイツ語さばきで、貫禄を示しました。 

★ 
プロンプターは、お客様には目立たないように台詞(歌詞)を伝える役割。
舞台上の役者や歌い手に、絶妙のタイミングで、きっかけを囁きます。
この『カプリッチョ』に登場したプロンプター(ムッシュ・トープ=もぐらの意/森田有生)は、R.シュトラウスその人となって表わされました。 


ナチスがユダヤ人である印(黄色い星)をつけたフラマンとオリヴィエを連れ去ろうとしますが、ラ・ロシュが巧みに切り抜け、二人を逃がします。 


明日の11時に、と言い交わして別れたフラマンも、オリヴィエも、二度とマドレーヌの前に現れることはなかったのです。だれもいなくなってしまったサロンの跡で、年老いたマドレーヌの回想として描かれた終幕。 

例えようもない美しさ、はかなさ、そして失った者への深い哀感を繊細に表現した沼尻竜典の指揮と東京シティ・フィルの音色でした。
(写真をクリックすると拡大してご覧いただけます)

▼公演詳細はこちらをご覧ください
2009年11月公演『カプリッチョ』- 公演記録|東京二期会

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