タグアーカイブ: 村林徹也

東京フィル<100周年記念>グルリットが遺した功績

日本のオペラ上演史と重なるオーケストラの100年を伝える
~第807回サントリー定期シリーズ~
二期会オペラの歴史とともにある、ともいえる縁の深いオーケストラ、東京フィルハーモニーが生誕100周年を迎えました。
11月18日に開催された第807回サントリー定期のプログラムでは、節目節目となったオペラ作品が取り上げられ、二期会のトップスターが出演しました。
指揮は、すらっと長身のダン・エッティンガー氏。

前半は、ワーグナーの重厚な合唱(東京オペラシンガーズ)に続いて、R.シュトラウス『ばらの騎士』の美しい三重唱。
後半は、グルリット作曲のオペラ『ナナ』。難役と感じさせない山下浩司、萩原 潤と2人のバリトンが好演。そして『ばらの騎士』のゾフィーを歌った吉原圭子が、『ナナ』ではタイトルロール。全くキャラクターの異なる役を見事に演じ分け、魅了しました。
プログラム最後はG.ヴェルディ『アイーダ』ハイライト。二期会を代表するテノール福井 敬がラダメス、アイーダは横山恵子、そしてアムネリスに期待のメゾソプラノ中嶋郁子が登場。エジプト王に出演したジョン・ハオは品のいい風格のある声で注目のバスです。ヴェルディ・オペラの真髄ここにあり、と言わんばかりのエッティンガー氏の指揮でオーケストラも最高潮に。素晴らしいソリストたちのアンサンブルに迫力あふれる合唱、オペラの舞台を観終わったような余韻がいつまでも客席にありました。
厳しい時代にも、音楽を愛し、音楽家を育てた信念の人に感謝しつつ。
▼公演について
第807回サントリー定期シリーズ - 東京フィルハーモニー交響楽団
特別インタビュー:マエストロ外山雄三、グルリットを語る - 特集|東京フィルハーモニー交響楽団
二期会からのソリストは、ソプラノ~吉原圭子、横山恵子、メゾ・ソプラノ~井坂 惠、中島郁子、テノール~児玉和弘、高田正人、福井 敬、バリトン~萩原 潤、村林徹也、山下浩司、バス~ジョン・ハオでした。

帆かけ舟

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11月公演オペレッタ『メリー・ウィドー』華やかに終幕!

二期会が初めて『メリー・ウィドー』を上演したのは1970年。以来、二期会の人気演目となりました。
パリを舞台に、莫大な財産を相続した若く美しい未亡人ハンナをめぐる恋の鞘当てが描かれるオペレッタ。若い勢いのある指揮者、下野竜也を迎え、東京交響楽団が奏でる親しみやすいレハールの音楽、日本語上演ということもあって、出演した歌手も客席と一体になって沸いた公演でした。テンポよく小粋な演出で客席を楽しませた山田和也、主役ハンナを演じた澤畑恵美、永吉伴子をはじめ、役者が揃った公演を、舞台写真とともにご紹介します。
◇19,21日キャスト(撮影:鍔山英次)
■20,23日キャスト(撮影:三枝近志)
■ 大富豪の未亡人ハンナ・グラヴァリが、外国人と再婚してしまったら、その財産が外国に流れ出て、財政危機に陥ってしまう、と頭を悩ませるポンテヴェドロ国の外交官たち。
左から
クロモー:村林徹也
ミルコ・ツェータ男爵:池田直樹
ボグダノヴィッチ:三戸大久 

■ ツェータ男爵の若い妻ヴァランシエンヌは、パリの青年カミーユ子爵といい雰囲気に。

ヴァランシエンヌ:坂井田真実子(左)
カミーユ・ド・ロジョン:小原啓楼 

◇ ハンナがパリの伊達男たちに囲まれて賑々しい登場。

ハンナ・グラヴァリ:澤畑恵美(中央) 

■ ハンナ(永吉伴子)に群がるパリ男たちのお目当ては、やっぱり財産?

ハンナ・グラヴァリ:永吉伴子(中央) 

◇ ツェータ男爵が扇を手にしているのを見て、驚くヴァランシェンヌ。その扇にはカミーユ(上原正敏)の愛の言葉が書かれているので大慌てです。ヴァランシェンヌの火遊びを知っている官邸の使用人ニェーグシュは、ツェータ男爵を前にしどろもどろ。
左から
ニェーグシュ:鎌田誠樹、ヴァランシェンヌ:菊地美奈
ミルコ・ツェータ男爵:加賀清孝、
カミーユ・ド・ロジョン:上原正敏 

■ ニェーグシュ役の鎌田誠樹は全日出演、『メリー』の立役者ともいうべき大活躍でした。 

◇ 昔の恋人ダニロ伯爵に再会したハンナ。財産目当てと思われたくないダニロは、ハンナに本心を打ち明けることができないばかりか、「愛している」なんて絶対言わないと誓う。そんな風ではハンナも素直になれないですよね─と客席から溜息。ダニロ役の星野は、2005年『メリー・ウィドー』でも同役、冷静沈着ですがハンナにはからきし弱い、ダンスも台詞も完全にダニロそのもの、多才ぶりを発揮しました。
ハンナ・グラヴァリ:澤畑恵美(左)
ダニロ・ダニロヴィッチ伯爵:星野 淳 

◇ 2幕。ハンナ邸で開かれた、故郷ポンテヴェドロ風の夜会。
ハンナが故郷に思いをはせながら歌う美しい「ヴィリアの歌」。
ハンナ・グラヴァリ:澤畑恵美(中央) 

◇ 気まぐれな妻に振り回される男たちが歌い踊る「女、女、女」は『メリー・ウィドー』のハイライト。
左から
カスカーダ子爵:大川信之、プリチッチュ:米谷毅彦
クロモー:福山 出、ミルコ・ツェータ男爵:加賀清孝
ダニロ・ダニロヴィッチ伯爵:星野 淳
ボグダノヴィッチ:小川裕二
サン・ブリオッシュ:北川辰彦 

■ メリー・ウィドー・ワルツの調べにのって踊るハンナとダニロ。ダニロ役の桝は、若々しい輝きのある声とさっそうとした演技で二期会オペラデビューを飾りました。

ダニロ・ダニロヴィッチ伯爵:桝 貴志(左)
ハンナ・グラヴァリ:永吉伴子 

 

■ 3幕。ダニロが通いつめるマキシムをしつらえたハンナ邸の大広間。この華やかさに、思わず客席も盛り上がります。 

◇ ハンナが再婚したら、財産の相続権は消滅すると聞いて、安心したダニロは、やっとハンナに「愛している」と言えました。

舞台中央
ハンナ・グラヴァリ:澤畑恵美
ダニロ・ダニロヴィッチ伯爵:星野 淳 

19,21日キャスト カーテンコール
(撮影:堀 衛) 

20,23日キャスト カーテンコール
(撮影:堀 衛) 

ポンテヴェドロ風の楽しい踊りを披露したダンサーたち、マキシムの踊り子をつとめた若手歌手たちにも多くの拍手をいただきました。
皆様、ご来場ありがとうございました。
(写真をクリックすると拡大してご覧いただけます)

▼公演詳細はこちらをご覧ください
2010年11月公演『メリー・ウィドー』- 東京二期会

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すべての登場人物を浮き彫りに
宮本亜門×アッレマンディ『ラ・トラヴィアータ(椿姫)』ついに始動

『ラ・トラヴィアータ(椿姫)』は人気オペラですから、映画などで観たことがある人も多いかも知れません。でも、あえて、この「宮本亜門×アッレマンディ」によるヴィオレッタの誕生を見届けることができる人は好運であると言えるでしょう。
総仕上げに入った稽古場から、最新ニュースをお伝えします。

018X1102.jpg宮本亜門演出では、周囲の人物を丁寧に描くことによって、中心人物がおかれた状況や、心の動きまでを、観客に納得させる強力な魔法がかかります。だからこそ、これまで多くは、まるで背景の一部であったかようなドゥフォール男爵(鹿又透、佐野正一)、それにガストン子爵(小原啓楼、高田正人)、ドビニー侯爵(村林徹也、福山出)、医師グランヴィル(鹿野由之、三戸大久)等の重要性が増すのです。彼らの一挙手一投足が、文字通り、パズルのように組みあがり、速いテンポのきっかけで次々と展開してゆく様に、きっと目を丸くすることでしょう。ここまで仕上げるのに、どれだけの稽古が行われたのか知る由もないですが、それこそ水面下の白鳥の足のような努力に違いないのです。

IMG_8930.jpgフローラからヴィオレッタに宛てた手紙
ヴィオレッタと同じ、夜の社交界の女友だち、フローラ・ベルヴォワ(小林由佳、渡邊史)。ドミ・モンドのイメージが沸かない・・・と、若い歌手たちは、本を読んだり、映画を見たり。「日本語で言う“娼婦”のイメージしかなかったけれど、大統領とか、外国の大使とか、と会話ができ、楽しませ、政治の場にも居合わせる高い教養がある人なのですね」と語ってくれましたが、知れば知るほど奥深い世界です。

Antonello_Allemandi.jpg指揮は、今回がウィーン国立歌劇場はじめ15プロダクション目の『ラ・トラヴィアータ』と語る、アントネッロ・アッレマンディ。背が高く、ダンディな指揮者です。
インタビューで、「難役ヴィオレッタを支えるのが私の仕事」(昨年12月ぶらあぼ)と語ったマエストロ・アッレマンディの指先と、舞台の上にいるヴィオレッタとは糸で結ばれているかのような絆を感じます。『ラ・トラヴィアータ』は名アリアが散りばめられている作品ですが、アッレマンディはアンサンブルの細かな調整にも余念がありません。アッレマンディの手になる『ラ・トラヴィアータ』は、ヨーロッパでも高い人気があり、今回東京でアッレマンディがこの作品を振るのはファンにとってはこの上もない幸せです。

ヴィオレッタは、二期会の名花・澤畑恵美、オーディションで抜擢された期待のソプラノ安藤赴美子。アルフレード(樋口達哉、井ノ上了吏)との出会いも別れも、すべて宿命だったかと思われるような、美しさです。愛を貫いた強さは、短い人生を慈しむかのようであり、また時代を問わず女性の強さかも知れません。もっともお側に仕えるアンニーナ(与田朝子、磯地美樹)は、「泣いてばかりでつらい」とも・・・。

IMG_8963.jpgヴィオレッタの手に咲く白い椿の花、シャンパンのグラス
ステージ脇に待機する舞台スタッフが、ヴィオレッタ役の歌の呼吸を読んで、一瞬の持ち替えを助けます。

多くのお客様のご来場をお待ち申し上げます。
2009年2月12日(木)〜15日(日)東京文化会館 大ホール
2009年2月公演『ラ・トラヴィアータ(椿姫)』公演情報−オペラ公演ラインアップ|東京二期会
スペシャルコンテンツ『ラ・トラヴィアータ(椿姫)』を楽しむ−オペラを楽しむ|東京二期会

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