2009年08月10日のエントリー

オペラ国内共同制作(2) オペラの制作現場からーその25

 文化庁の先導モデル国内共同制作によるオペラ『カルメン』が、日本のオペラ史に新たな歴史を作りました。今回は兵庫県立芸術文化センターの佐渡芸術監督がプロデュースし、共同制作4団体が協力して制作を行い、出演者・スタッフもインターナショナルな規模で選ぶという、画期的なプロジェクトでした。兵庫と二期会で合同の合唱団を結成すると共に、少年少女合唱団は参加3団体が地元の合唱団を起用しました。そして全15回公演の大半で満席、残りも90%をはるかに超えるお客様で会場が埋まり、しめて入場者3万1千人という驚異的な結果をもたらしました。
 フランスでも活躍する佐渡裕の選んだ演出家は、パリオペラ座の総裁も務めた名演出家ジャン=ルイ・マルティノーティ。彼の卓越した演出力と出演者達一人一人への根気強いしかも厳しい指導によって、参加者全員参加によるドラマ作りとなって、自信溢れる舞台を作り上げたのです。
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        写真は林美智子の演じたカルメン ©小林孝良
 公演に漕ぎ着けるまでには、それぞれの参加団体が個別の要求を控えて一つの目標を設定するまでの膨大な議論と試行錯誤がありました。採用する楽譜も結果的にはセリフが入るオペラコミック版に部分的にギローの手が入ったレチタティーボ版(グランドオペラ版)を混ぜた上演となったのもその一つです。しかし、それらの全ての苦労は結果によって報われるということが証明されたわけです。一人一人の歌手達のレベルアップも著しいものがありましたが、我が国最高の舞台を目指すという目標がありますから、国籍や所属に拘らずオーディションを行い、佐渡芸術監督主導で歌手を選考し、結果的に今望み得る最高レベルの公演となったと思います。
 結局は、自分たちがやりたいオペラをやるというのではなく、どうすればもっとお客様に感動していただけるオペラが作れるのかを追求した取り組みに、はっきりと成果がついて来たということだと思います。
 オペラ公演をやりたいとお考えの団体にとって、経済的リスクを軽減する目的で共同制作を行おうとすれば、多かれ少なかれこのような準備作業が必要となります。それを大変と見て逡巡するか、その準備があったればこそ単独では為し得ない感動的な公演ができると考えるかによって、結果はまるで違ってくると確信しています。(常務理事 中山欽吾)

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