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【イベント・レポート】2月22日(木)『ローエングリン』平日マチネ・スペシャル~演出・深作健太アフタートークを開催しました!

【※一部に新演出の内容記述がありますので、ご鑑賞前の方はご注意ください】

2月21日(水)、東京二期会オペラ劇場『ローエングリン』が東京文化会館で幕を開けました。準・メルクルの緻密で流麗な指揮のもと東京都交響楽団が奏でる震える弦の透き通る美しさ、堰を切ったように咆哮する管楽器に飲み込まれる『ローエングリン』の舞台。

タイトルロールは、福井 敬と小原啓楼。気品に満ちたエルザ姫は林 正子と木下美穂子。対抗するオルトルートは中村真紀と清水華澄、その夫テルラムントは大沼 徹と小森輝彦、ハインリヒ王の小鉄和広と金子 宏。出演者の総力を挙げて、熱気あふれる公演となりました。合唱は二期会合唱団。

初日から大きな話題となっている今回の舞台について、22日(木)の公演終了後、スペシャルイベント「演出・深作健太によるアフタートーク」が行われ、およそ400名のお客様が参加されました。聞き手は大野徹也公演監督。演出コンセプトの解説だけでなく、お客様からの質問も多く飛び濃密な1時間となったのではないでしょうか。その様子を少しお伝えいたします。



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深作: ワーグナーの作品の中でも、僕は『ローエングリン』がもっとも美しいオペラだと思っていて、今回『ダナエの愛』に続いて憧れの準・メルクルさんとまたご一緒できるなんて夢のようだと思っていたのです...が、始めてみますと、ワーグナーさんの恐ろしさを身をもって知ることになり、毎日が絶壁を登っているような思いでした。もう夢枕にもワーグナーさんが立って、日本語で「凡庸ダ!」と怒られたりもしました(会場笑い)



(舞台にかけられていた肖像画をもって)劇中にも登場するこちらの絵の方がどなたかおわかりでしょうか?今回はワーグナーを庇護し、その芸術に深く傾倒した、バイエルン王ルートヴィヒII世の生涯に焦点を当てて演出プランを作りました。
その生涯は、ルキノ・ヴィスコンティ監督の映画でも有名です。18歳のときに突然父を亡くし王位を継承するも、政治・戦争の世界に背を向け、まるで美の世界へ逃避するかのように自らを白鳥の騎士ローエングリンに擬え、新白鳥城(ノイシュヴァンシュタイン城)を築いた王へのオマージュとして、『ローエングリン』をこの悲劇の王の最後の一日として描くことにしたのです。

稽古場では歌手の皆さんとディスカッションを重ね、オペラ『ローエングリン』が本来持つ、物語や時代性を尊重しつつ、“今”を生きる人々のための演出を問い続けました。
大きな戦争が終わって70年以上が経ち、日本も世界も、またキナ臭い時代にむかう予感に包まれる中、いま〈英雄〉を描くオペラを上演するという事が、僕には繊細な問題をはらんでいるように思われました。
その状況は、ワーグナーさんが生きた19世紀の時代にも通じます。ドイツ統一を求める声が高まる中、戦争の世紀へ向かおうとする時代の中で『ローエングリン』は書かれました。
ローエングリンは、エルザに禁制を破られることで、結果的には戦わずしてこの世を去ってしまいます。彼はいわば「非戦の英雄」です。そこから出発しようと思いました。

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(前奏曲から、老いた男が登場。それが最期のルートヴィヒII世。政治に背を向け、すでに亡きワーグナーが残した楽譜を抱え、芸術の世界に逃げ込んでいます。大きなデジタル時計が最初[00:00:00]を指し、時間が逆戻りし始めます。いつしか、ルートヴィヒは、若きローエングリンとなって、この物語を生きてゆきます。)
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稽古場では素晴らしい瞬間がたくさんあって、3幕の名曲、「名乗りの歌」と「別れの歌」を、ローエングリン役の福井 敬さんと小原啓楼さんが歌われた時に、それを聴いた僕たちは本当に泣いてしまっていたのですね。なんというか、神々しい〈英雄〉が歌うのではなく、普通の人間が、愛する女性に訴えかける歌として聴いた時に、二つの歌の新しい可能性が発見できたのです。
ルートヴィヒII世は、英雄ローエングリンになりたかった、そして、なれなかった男です。エルザは彼を愛するが故に「本当の名前を教えて」と禁問の誓いを破りますが。それに対し本当は彼は「ルートヴィヒ」と答えるべきなのに、「ローエングリンだ」と歌ってしまう訳です。王制の時代が終わり民主主義の現代、僕たち大衆は時に多数決で、間違えた英雄を選んでしまう。ヒトラーのような怪物を生み出したのは僕たち自身なのです。合唱が一方の主役ともいえるこのオペラで、ワーグナーはそう語っているような気がするのです。

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(王亡き後、デジタル時計は、また時を前に向かって刻み始めます。二人の女性、エルザとオルトルートは争いを超えて、共に平和を祈ります。)
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(この記事はアフタートークの記録を内容にあわせ編集部で再編集したものです)

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▼いよいよ25日(日)千秋楽。どうかお見逃しなく!《チケット絶賛発売中!》
2018年2月公演 R.ワーグナー『ローエングリン』 - 東京二期会オペラ劇場


●お問合せ・ご予約:二期会チケットセンター 03-3796-1831
   (月~金 10:00~18:00/土 10:00~15:00/日祝 休)

Gettii 《便利!》
◎二期会チケットセンターのオペラ公演インターネット予約【Gettii(ゲッティ)】では、前売券が公演当日の開演1時間前までご予約が可能です!!
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8/20(日) 東京交響楽団:東京オペラシティシリーズ第99回
「三人の会」、そして黛まどかと千住明の世界

大友直人マエストロ、東京交響楽団による日本の作曲家特集で、千住 明作曲『滝の白糸』(第3幕のみ演奏会形式)が取り上げられます。
2014年金沢での初演以来、再演を重ねている同作品に今回、欣哉役のテノール高柳 圭をはじめ、北原瑠美、加藤太朗、北嶋信也、寺田宗永、大川 博、小林啓倫、金子 宏、清水那由太が様々なシーンで登場します。
どうぞご期待ください!

欣哉役:高柳 圭


北原瑠美

加藤太朗

北嶋信也

寺田宗永

大川 博

小林啓倫

金子 宏

清水那由太


■■■ 公演情報 ■■■
東京交響楽団:東京オペラシティシリーズ 第99回
日時:2017年8月20日(日) 14:00開演
会場:東京オペラシティ コンサートホール
曲目:芥川也寸志 弦楽のための三楽章「トリプティーク」
   團 伊玖磨 管弦楽幻想曲「飛天繚乱」
   黛 敏郎 「饗宴」
   千住 明 オペラ『滝の白糸』から第3幕(台本:黛 まどか/演奏会形式)
指揮:大友直人
『滝の白糸』出演:
   (ソプラノ)中嶋彰子、北原瑠美
   (メゾ・ソプラノ)鳥木弥生
   (テノール)加藤太朗、北嶋信也、高柳 圭、寺田宗永
   (バリトン)大川 博、小林啓倫
   (バス)金子 宏、清水那由太
   (合唱)東響コーラス

▼公演詳細・ご予約はこちらから
東京オペラシティシリーズ 第99回|コンサート情報 - 東京交響楽団

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『ウリッセの帰還』さまざまに姿を変える神々と人間の交感若さあふれるオペラの息吹きを届けました

6月6日(土)・7日(日)に北とぴあさくらホールにて上演いたしました、二期会ニューウェブオペラ劇場モンテヴェルディ『ウリッセの帰還』(ヘンツェ版・日本初演)はおかげさまをもちまして大盛況のうちに幕を下ろしました。
高岸未朝による繊細な演出、高関健の指揮による東京交響楽団の強力なサポートを得て、モンテヴェルディ独特の音世界を、現代オーケストラの響きで構築。若手中心の歌手陣のエネルギーを感じさせました。
モンテヴェルディの音楽による情景描写を“善意と悪意”6人のダンサーが視覚化。踊り、舞台転換、黒子、船などありとあらゆる事象を体現し、羊になり、神になり、召使になり、その効果は劇的でした。
2日間の華麗な舞台をご覧いただきましょう。
【6日(土)の舞台から】撮影:三枝近志

冒頭、プロローグのシーン。はかなさは地球の上にいるが、バランスを崩して今にも落ちそう。はかなさ(彌勒忠史)、愛(村田ゆう子)、時(嘉目真木子)


英雄ウリッセの妻ペネロペ(杣友恵子)は既に20年、夫の帰りを待ち続けている。


女官メラント(醍醐園佳)とエウリマコ(西岡慎介)。
とりとめもない幼い愛人たち。


英雄ウリッセ(大沼徹)。故郷に帰ることが許されない苦しみを力強く歌う。


忠実な羊飼エウメーテ(小林大作)は、安定した歌唱力、自然な演技で、客席を惹き付けた。老人の姿をしたウリッセを、そうとは知らずに心からもてなす。


ペネロペの邸に、息子テレーマコ(宮本英一郎)が帰ってくる。エウメーテとともに、ウリッセの帰還が近いことを告げるが、ペネロペは信じようとしない。


女神ミネルヴァ(大西ゆか)。人間の選択が正しいものであるように導く。ミネルヴァは、いつも明るい光とともに登場する。美しく賢明な女神を見事に演じた。


ついに、夫ウリッセその人と信じることができた瞬間、深い喜びと安堵に満ちた、ペネロペとウリッセ。


カーテンコール(撮影:堀 衛)

【7日(日)の舞台から】撮影:鍔山英次

待つ時間の長さに匹敵する長大なアリアを、魅惑的に歌うペネロペ(金子美香)。
深い表現力を持つメゾ・ソプラノの美声を存分に披露した。


エウリマコ(森田有生)とメラント(中野亮子)。
モンテヴェルディが描く世俗の恋の世界を、鮮やかに聴かせた。

 
変身前のウリッセ(小林昭裕)と、変身後のウリッセ。小林は、しっかりと鍛錬したバリトンの声の魅力を感じさせる。
 
牧童の姿をしたミネルヴァ(佐藤奈加子)がウリッセに、故郷の妻ペネロペの貞節を告げる。
真の姿ミネルヴァへの変身シーンは、歌舞伎の早変わりのよう。
佐藤は、低音から高音まで美しい響きで、気品あふれる女神を歌った。

ウリッセの息子テレーマコ(岡田尚之)が、ミネルヴァに連れられて、スパルタから帰国する。
岡田は明るく力強いテノールで、現在注目されている若手の一人。


3人の求婚者。左から、ピサンドロ(飯田康弘)、アンティノオ(金子宏)、アンフィノモ(高梨英次郎)。調子のいいピサンドロ、気ままな青年貴族アンフィノモ、アンティノオの悪役ぶり、となかなか楽しい演技を見せて飽きさせなかった。


大食漢イーロ(渡邉公威)。ウリッセが帰還し、宮殿を追い出され、食べる楽しみがなくなって死んでしまう。悲哀と可笑しさが同居する役を巧みに演じた。


紫はウリッセの色。


特殊な編成のオーケストラ。打楽器群は、オーケストラピットに入らず、花道に
紗幕貼りの部屋を作って収容された。


カーテンコール(撮影:堀 衛)

ご来場いただき、誠にありがとうございました。
(写真をクリックすると拡大してご覧いただけます)

▼公演詳細はこちらをご覧ください
2009年6月公演『ウリッセの帰還』- 公演記録|東京二期会

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