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【レビュー】『カヴァレリア・ルスティカーナ』『パリアッチ(道化師)』無事終演

東京二期会オペラ劇場初登場となる田尾下 哲の新演出が話題となったヴェリズモ・オペラの傑作『カヴァレリア・ルスティカーナ』『パリアッチ(道化師)』。
舞台写真とともに、公演を振り返ります。
写真撮影:三枝近志(◇…7月13・15日組、★…7月14・16日組)
<舞台写真はクリックで拡大表示します>

N.Y.で活躍する、幹子S・マックアダムスの洗練された装置にもご注目ください。

『カヴァレリア・ルスティカーナ』はシンプルでインパクトのあるモノトーン


『パリアッチ』ではポップな色彩と、1960年代を表すTVの撮影セット

指揮はイタリア、ミラノ生まれのパオロ・カリニャーニ。
イタリア各地の歌劇場、ウィーン、パリ、メトロポリタン、ケルン、ジュネーヴ、バルセロナ等、世界一流の歌劇場を指揮し、フランクフルト・オペラの音楽総監督を10年務めたというキャリアながら、毎日、リュックをひょいと担いでプールに通い、颯爽と稽古場に登場。梅雨明けした東京の暑さをものともせず熱の入った稽古を繰り返し、イタリア・オペラの世界を日本で、現代の東京で作り上げました。
『カヴァレリア・ルスティカーナ』の幕開け。

トゥリッドゥ(岡田尚之)と、ローラ(富岡明子)がよりを戻してしまったのを知ったサントゥッツァ(大山亜紀子)の悲しみ。


有名な合唱<オレンジの花は香り>。今回はローラ(澤村翔子)と村の有力者で馬車屋のアルフィオ(松本 進)の結婚式の場面として描かれました。兵役から戻った恋人トゥリッドゥ(大澤一彰)を見て、思わず、ブーケを落とすローラ。


彼の母親ルチア(池田香織)が営む酒屋を訪ねたサントゥッツァ(清水華澄)は、トゥリッドゥの心変わりを訴えます。


サントゥッツァの名アリア<ママも知る通り>。嘆くルチア(栗林朋子)。


トゥリッドゥに戻ってくるように、何度も頼むサントゥッツァ。でもサントゥッツァとの仲は、ローラへのあてつけで始まったのだし、もともと恋仲だったローラとよりを戻したトゥリッドゥは、追いすがれば追いすがるほど冷淡になり、まったく取り合わないのです。


ローラがアルフィオと結婚さえしなければ、サントゥッツァはこんな惨めな思いはしなくて済んだのに、子まで宿して、村人には陰口をたたかれ、哀れでならない。一方、ローラは美人でお金持ち。トゥリッドゥはローラと教会に行ってしまいます。


トゥリッドゥは、村の復讐のしきたりに従い、ローラの夫アルフィオと決闘することになりました。
母親のルチアにそれとなく別れを告げるトゥリッドゥ。<母さん、この酒は強いね>。
そして「もし戻らなかったら、サンタの母親になってやってほしい」と。
岡田は素晴らしく熱く輝く声で、トゥリッドゥを演じました。


アルフィオ(小川裕二)とトゥリッドゥの決闘シーン。トゥリッドゥは殺され、幕となります。

『パリアッチ』

トニオ(上江隼人)が、テレビのインタビュー番組に出ているシーンから、始まります。今回の演出では、トニオがすべての糸を引く。ネッダに横恋慕し、その夫カニオの嫉妬を操る、という難しい役回りでしたが、自在に舞台に出入りし、邪心を隠し持つ野心的な人物を演じて、強い印象を残しました。


鮮やかに降り立つ座長カニオ(大野徹也)とその妻で女優のネッダ(嘉目真木子)。


ネッダのアリア<鳥の歌>。いつの日か大スターになる!新進女優の華麗な演技。


高橋絵理が演じるネッダ。遊び、夢に夢見るような可憐さ。言葉と声と音楽・・・豊かな表現力を開花させました。


トニオ(桝 貴志)がネッダに言い寄りますが、相手にもしないどころかあざ笑うのです。


ネッダにとって、シルヴィオ(塩入功司)こそが本当の愛。
塩入は、艶やかで深みのある美声。


ネッダは、ついにシルヴィオ(与那城 敬)と駆け落ちすることを承知します。
与那城はこれまでにも二期会オペラに数々登場していますが、さすがのいい男ぶり。


一番の聴かせどころカニオのアリア<衣裳をつけろ>。
ネッダの裏切りを知り心ここにあらずですが、芝居の時間です。道化師Pagliaccio。


ネッダは《コロンビーナ》を、ペッペ(小原啓楼)は《アルレッキーノ》を演じます。


ペッペ(与儀 巧)が演じる《アルレッキーノ》のセレナータ。可笑しさと明るさがあって、ペッペの存在がこのオペラの重苦しさを救っている気がします。


芝居と現実の境を見失って次第に正気を失っていくカニオ(片寄純也)。激情と豊かな音楽を堪能させ、客席を沸かせました。


「助けて!」と叫ぶネッダに走り寄ったシルヴィオがカニオを刺し、カニオはシルヴィオを刺す。3人とも死んでしまうという壮絶な結末。

2作品とも惨劇で幕が降ります。人と人との関係で湧き上がる感情、嫉妬、怒り、絶望の究極の結末。生身の人間は、それでも日々演じ、仮面をかぶり、別の顔を見せているものです。本当の自分はどこにいるのか分からなくなっているのは、何も劇中人物だから、なのではなくて、その状況をどこか他人が操作しているような感覚があるからなのではないでしょうか。
この幾層にも重ねられた演出に、見事にこたえた歌手たちに大きな拍手が送られました。そして、楽譜に書かれた言葉が、生きた人間の言葉として歌われたことは、何よりも音楽の力でもあって、大きな感動を呼びました。
ご来場、ありがとうございました。

帆かけ舟

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ウィーンで活躍中の甲斐栄次郎 近況

KaiDonGiovanni01.JPGウィーン国立歌劇場専属ソリストとして活躍を続けるバリトンの甲斐栄次郎。
2010年1月に『ドン・ジョヴァンニ』にマゼット役で、この3月10,13,16日にはシェーンベルク作曲『モーゼとアロン』にエフライム役で出演し好評を博しました。

KaiDonGiovanni02.JPG
1月にウィーンで出演した『ドン・ジョヴァンニ』から(カーテンコールは右から2番目)
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今後のウィーン国立歌劇場における甲斐栄次郎出演予定
◆4月5,8,11日『ラ・ボエーム』ショナール役
◆4月10,13,16,21日『リゴレット』にマルッロ役
▼ウィーン国立歌劇場
Willkommen bei der Wiener Staatsoper
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国内では、2011年6月に新国立劇場『蝶々夫人』シャープレス役で出演予定
 蝶々夫人:クリスティーネ・オポライス
 ピンカートン:ゾラン・トドロヴィッチ
 シャープレス:甲斐栄次郎
 スズキ:大林智子
 ゴロー:高橋 淳
 ボンゾ:島村武男
 ヤマドリ:松本 進
 ケート:山下牧子
▼詳細はこちらをご覧ください
蝶々夫人|オペラ|新国立劇場

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NHK ハイビジョン ウィークエンドシアター に、この夏話題の『カルメン』登場!

この夏、二期会が日本オペラ連盟、兵庫県立芸術文化センター、愛知県文化振興事業団と共同制作した「カルメン」が今週末、9/12(土) 23:00~ NHK-BS hi にて放送されます。
このプロダクションは、兵庫県立芸術文化センターで9回、東京文化会館で4回、愛知県芸術劇場で2回の合計15回上演され、どの公演もほぼ満員の大盛況でした。
オペラ「カルメン」は、フランスの作曲家ジョルジュ・ビゼーが1873~74年に作曲したものです。親しみやすい旋律、登場人物の際立つキャラクター、わかりやすい脚本ゆえに、 世界中でとても親しまれているオペラの一つといえるのではないでしょうか。
今回の公演では、20世紀のオペラ演出界をリードしたジャン・ピエール・ポネルの薫陶を受け、 1986年から89年までパリ・オペラ座総裁を歴任した ジャン・ルイ・マルティノーティが演出を手掛けました。これまでの毒々しいカルメンではなく、美しい女性の「カルメン」をコンセプトとし、林美智子が見事に美しいカルメンを演じきりました。
どうぞ、この美しいカルメンをご堪能下さいませ!
佐渡裕芸術監督プロデュースオペラ 2009  歌劇「カルメン」
▼放送予定
 番組名:NHK ハイビジョン ウィークエンドシアター
 放 送:NHK BS hi  2009年9月12日 23:00~2:03
▼放送内容
 収録日:2009年7月4日 
 収録会場:兵庫県立芸術文化センター KOBERCOホール
 《出演》
 カルメン:林美智子
 ホセ:佐野成宏
 エスカミーリョ:成田博之
 ミカエラ:   安藤赴美子
 フラスキータ: 吉村美樹
 メルセデス:  田村由貴絵
 モラレス:   桝 貴志
 スニガ:    松本 進
 レメンダード: 大川信之
 ダンカイロ:  初鹿野剛
 合  唱:二期会合唱団、ひょうごプロデュ―スオペラ合唱団
 児童合唱:ひょうごプロデュースオペラ児童合唱団
 管 弦 楽:兵庫芸術文化センター管弦楽団
 指  揮:佐 渡   裕
 演  出:ジャン=ルイ・マルティノーティ
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撮影:三枝近志
また、BS-hiでは「カルメン」放送後に続けて、一昨年6月に紀尾井ホールで開催されたメゾ・ソプラノ林美智子のリサイタルの模様が再放送されます。
前半は日本の歌を、そして後半には得意とするオペラ・アリアを披露し、現在の充実ぶりを存分に発揮致しております。
中でも武満徹の5つの歌曲が圧巻で、殊に「死んだ男の残したものは」は聴く者の胸を打つ感動の1曲です。
林 美智子 メゾ・ソプラノ リサイタル
▼放送予定
 番組名:NHK ハイビジョン ウィークエンドシアター
 放 送:NHK BS hi 9月13日(日) 2:05 ~ 3:00 
 
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林美智子(Ms)、河原忠之(Pf) 写真提供:紀尾井ホール
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NHK ハイビジョン ウイークエンド シアター
※局の都合で予定は変更されることもありますので、予めご了承ください。

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